伊豆へ行きたい(増補版)
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ほっといたら流れるな、と思った。動かなきゃ、と思った。スマホにかじりついて検索した。船を改造した露天風呂のある民宿。その日、水揚げされた海の幸を、漁船一隻丸ごと買い上げて食べさせてくれると言う。他に、周りには観光スポットなど、何一つない宿だったが、そこが良いと思った。おいしいものを食べて、ゆっくり温泉につかろう。一人で決めて、勝手に宿を予約した。
次に、切符を手配した。出発の朝は、早過ぎず、慌てないように。帰りも早くしたかったが、一泊二日で旅行を楽しむには、多少遅くなるのは仕方なかった。きっと、皆、疲れて寝てしまうだろう。
家族に話したのは、すべて押さえてからだった。出発まで五日もなかった。
二日目の行動は、皆で話し合うつもりだったが、結局、私が決めた。小さなクルーザーで、沿岸を遊覧し、島々を眺め、最後には、船ごと洞窟に入る。その洞窟の中には、ぽっかりと天井に大きな穴が開いていると言う。
気になったのは、すべてが、あまりにもお天気頼みの旅であることだった。しかし、そこは、文字通り運を天に任せることにした。
作品名:伊豆へ行きたい(増補版) 作家名:でんでろ3