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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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ひき逃げ

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「ああ、そうだった・・ 彼、最近も、よく来るのか?」
「3日と空けず来てるよ、まったく何処にそんな金が有るのか・・」
「だよな・・」
そんな話をしながら、俺は、このレストラン付近で、ニッキに怪我を負わせた奴に制裁を加える計画を実行する事に決めた。
「何も知らずに楽しんでるが好いさ。そのうち、一泡吹かせてやるからな・・」
と、俺は、一人で呟きながら、おっさんの店に帰った。

人懐っこいチトだが、さすがに俺が紹介したチェリーとだけは、どうも何時もと勝手が違う様だ。
チトの車を売り払った所為で、俺達三人は、ミスター・シンが頻繁に通っている店まで歩かねばならない。
「・・まったく、一言話してくれても好いだろうに・・ 勝手に俺の車を売りやがって・・ おまけに、俺は、自転車まで無くなって・・」
「我慢しろ。俺なんか車はおろか、自転車も持っていない。」
「そんな貧乏ったらしい話なんかしないでよ。・・それよりチト、あんた、よく見れば可愛いわね、オカマに興味は無いの?」
「・・・」
「もし、そんな気持ちになったら、わたしが、好い人を紹介してあげるから・・」
「・・・」
「そんなに嫌そうな顔、しないでよ・・」
「悪いけど・・、あんた、少し離れて歩いてくれよ・・」
「あら、随分な事を言うわねぇ・・ わたし、気分、害しちゃった・・」

集合場所から40分ほど歩いて、俺達は、目的の店に着いた。
勿論、その間、俺達の計画を上手く運ぶ為に、何度も打ち合わせをした事は、言うまでもない。
レストランに着くと、早速俺は、先日知り合ったばかりの、駐車場の小遣い稼ぎに、
「お兄さん、これで何か美味いものでも食べて来なよ。その間、俺が、此処を見ておいてあげるから・・」
と、少し纏まった金を見せながら話した。
彼は、怪訝そうな顔で俺を見た。俺は、そんな事など一切構わず、
「今日は、俺達のボスが此処に来るから・・」
と、適当な嘘を並べた後、傍に立っているチェリーにちょいと合図を送った。チェリーは、
「お兄さん、この男の言う事を、素直に聞いた方が好いわよ。なんなら、わたしが、暫く付き合って上げても構わないわよ・・」
と、凄みを効かせながら、彼を誘惑。
小遣い稼ぎは、チェリーに言い寄られ、おそらく身体じゅうに鳥肌でも立ったのか、身震いをさせながらその場をすぐに去って行った。
次に俺は、チトをレストランの入り口に立っているガードマンに近付けさせた。
この国のガードマンは、拳銃やショットガンを携帯している。俺にも、ガードマンの仕事をしている友人が、2~3人居る。数は、決して多くはないけれど、中には、銃を合法的に使用出来るからこの仕事に就いているという、所謂、発砲マニアも居るそうだ。だから、店先などで、何かを目的として行動を取る時は、このガードマン達に不信感を与える事だけは、絶対に禁物である。
このレストランの駐車場には、出入り口が二つ在る。ひとつは、大通りに面している。そして、もう一つは、大通りに繋がる脇道から出入りする、やや小ぶりの出入り口である。
俺の計画を上手く実行するには、ひき逃げチャイニーズに、どうしても脇道側の出入り口を通らせねばならない。そこで、ガードマンに、これまた幾ばくかの金をチラチラ見せながら、
「これから、この店のオーナーの非常に大切な客が、お見えになるというので、俺達は、此処で待っている。お見えになった際、彼等が、少しばかり我儘な行動を取るかも知れないが、大目に見て欲しいという、オーナーからのお達しが有ったので、その辺り宜しく・・」
といった内容を、尤もらしくチトが伝える。
ガードマン(2人)は、チトが差し出す金を素早く受け取り、その後、にっこりと笑いながら頷いた。彼等にしてみれば、チトの話の真偽など問題ではない。問題は、受け取った金額と、客の我儘な行動が、チトの言葉通りほんの少しばかりのものであって欲しいと思うだけ。そして、思った以上にややこしくなったり、チトの話が嘘だと分かれば、彼等は、ほんの少し前に貰った金の事など忘れて、遠慮なくチトに銃口を向けるだけである。
勿論、チトも、その辺りの事は承知の上だ。
小遣い稼ぎが何処かに消えた後、俺とチトは、駐車場に出入りする車をさばきながら、ひき逃げチャイニーズが現れるのを待った。チェリーは、あまりにも目立ち過ぎるので、脇道の薄暗がりで待機。尤も、その方が、別の意味で目立つかも知れないが・・。
そうこうしていると、目的のチャイニーズが御供を連れてやって来た。彼等は、男二人と女二人の四人連れだ。
チトが、上手い具合に、彼等の車を駐車スペースに誘導してチップを受け取る。
さあ、後は、運を天に任せるしかない。つまり、この店の『オーナーの大切な客』だとガードマンが信じるに足りる裕福な客が、ひき逃げチャイニーズが店を出るまでに現れるかどうか・・という事。大型車で乗り付け、如何にも鷹揚な仕草の家族連れなどであればいうことは無いのだが・・
その高級車の客達を適当におだて上げ、店の特別な計らいだという事にでもして、大通りに面した出入り口に車を停めさせて、他の車が、脇道に出ざるを得ない様にしなければ、計画が大きく狂ってしまう。
ひき逃げチャイニーズが、中に入ってからおよそ1時間が過ぎようとしている。
このレストランは、アルコール類も飲めるが、やはりメインは、食事である。そろそろ奴等が出て来る頃だが・・、まだ適当な高級車に乗った客は、来ない。俺は、チトに、
「もし大通りに面した出入り口を塞ぐ前に奴等が出て来たら、適当な理由をくっ付けて、脇道の方に出る様に言うんだぞ。」
と、念の為に言った。こういう時のチトは、理解が早い。
「任せておけ。」
と、すぐに応えた。
それから10分ほど後に、彼等がレストランの中から出て来た。そして、彼等が、車まで歩いている間に、1台の日本製のワゴン車が、運よく大通りから入って来た。俺は、出入り口に向かって走り、そのワゴン車を入り口付近で止めた。そして、ひき逃げチャイニーズの車を指さしながら、
「いらっしゃい。少し待っていて下さい。もうすぐあの車が帰りますから、其処に停めて下さい。」
と、愛想笑いをしながら言った。
ワゴン車の客は、無言で頷くと、ドライバーを残して出入り口付近で車から降り始めた。
チトは、車に乗り込もうとしているひき逃げチャイニーズと何か言葉を交わしている。俺は、チトに合図を送った。彼は、頷いて、奴等の乗った車を脇道に誘導する。それを確認した後、俺は、
「さあ、どうぞ・・」
と、待たせていたワゴン車のドライバーに、ゴーサインを出した。
普通なら、ワゴン車を誘導して、上手く駐車するまで何かと世話をするのだが、何しろ今日の目的は、駐車場で小遣い銭を稼ぐ事ではない。
俺は、駐車スペースに向かったワゴン車などに見向きもしないで、チャイニーズの車を追う為に一目散で駆け出した。
脇道に出ると、俺の前をチトが走り、更にその前をチェリーが走っている。
奴等の車は、レストランから10軒ほど先に在る建物の角を左折した。
「よし、やったぞ!」
と、チトが、叫ぶ。
「ウッホ~~!」
と、かん高い奇声を発しながら、車に続いて角を駆け曲がるチェリー。
作品名:ひき逃げ 作家名:荏田みつぎ