からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話
「そんなことないと思う。
真ん中の前橋市で、また会うことが出来たじゃありませんか。
ただし、あなたは未だに独身。そう言うあたしは人妻。ですけどね」
「いまだに俺たちに、なんかの可能性が残っているという話かな。
人妻の君と、不倫関係に陥るのだけは、どうにもこうにも抵抗がある。
俺、苦手なんだよ。そういう関係が」
「あら・・・・大人になったのね、康平も。
私も嫌いです。そういうふしだらの関係は。
でも。高校生の時に想いを遂げられなかったあたしたちが、なぜこんな風に
再会した上に、いっしょにお酒まで飲んでいるんだろう。
どこかに何かが、残っているのかもしれません。
今はどうにもならないけれど、そのうちの何かが期待できるかしら。
それまでは、いつまでも、良いお友達でいましょう、ねぇ康平?」
「いい友達でいられたら、そのうち一緒になれる可能性が有るんだろうか。
なんとなくだが、ふと、そんなニュアンスに聞こえたぞ」
「あなたって。女に不便していて、欲求不満なの?
なんで恋をしないの。
いつも顔を出している貞ちゃんと、ずいぶんいい雰囲気なのに。
肝心なところで押しの一手が足りないんだもの・・・・
女が欲しければ、『おっぺす』くらいの気迫がなければ、
みんな逃げてしまいます。
女性にたいして人がよすぎるのよ。詰めも甘いわ、康平は」
「おっぺす?・・・・女を押し倒せっってことか。
そこまでして女が欲しいとは思わないけどね、俺は。君以外には・・・・」
「ほら。そこでまたあんたは、訳の分からないことを言う。
そういう優柔な男に、女は安心をしてついて行く気に、絶対なりません。
外見はまぁまぁだし、性格も合格点だけど、肝心な部分で優柔不断すぎます。
好きにしなさい。
どうしてもあなたでなければ駄目と、そう言ってくれる女性が現れるまで!」
「現れるかなぁ。俺の前にそんな女性が・・・・」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話 作家名:落合順平