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からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(37)
「美和子が歩いてきた道は、少しだけ楽しくあとはほんのりホロ苦く」

 午前3時を過ぎると、夜明けまで営業をしているスナック『辻』も、
さすがに閑散としてくる。空席が目立ってきた。
居残っているグループや人目を偲ぶカップルは、『最終便』と呼んでいる
運転代行業の最後の客だ。
迎えに来るまでの時間を、思い思いに過ごしている。

 「因果はめぐる糸ぐるま、何ていう言葉があります。
 あなたの唄には満たされないまま、やるせない恋を嘆いているくせに、
 それでも男を愛している、切なさがあふれています。
 でもそれって、まさかご自分のことではないでしょうねぇ・・・・
 美和子ちゃん。
 まぁそれはどうでもいいとして、糸車などというその昔、座ぐりで使った
 古い農機具のことをよく知っていますねぇ、その若さで」

 静かさを取り戻した店内に、ゆったりとした時間が流れていく。
手持ち無沙汰になったママが、何気なく、美和子へ語りかけている
『赤城の南面といえば、赤城の糸と生み出した一帯です。
女たちの真冬の仕事として、座ぐり糸の生産が盛んだった地域です。
養蚕が全盛だった時代の話ですから、今から50年以上も昔のことになりますねぇ』と、独り言のように語る。