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からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話

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 「不思議じゃないさ。千佳子は私より、いつつ年下だ。
 可愛い子でねぇ。色白で無口だったけれど、いつも笑顔の
 人懐っこい子だった。
 幼稚園の頃から面倒を見てあげたもんだ。
 大きい赤いランドセルを背負って、大粒の汗をかきながら一生懸命に
 学校へ坂道を歩いていた、あんときの女の子がいつのまにか、
 こんな大きな男の子のお母さんだ。
 あたしも一度くらい結婚して、子供を産んでおけばよかったなぁ。
 そんなことをいまさら考えても、すっかり後の祭りだね。あっはっは」


 『じゃあ、ほんとうにここで降ろすわよ』辻ママが、そう言いながら
簡易郵便局の前に車を停める。

 「康平くん。お別れのキスはいらないのかい?
 別れてしまうと再会まで、たぶん、長い時間が空くでしょう。
 あなたはともかく、美和子ちゃんがお別れを寂しがっています。
 いいのかい、ほんとうにキスはしなくても?
 後悔しないかい、あんたは。お別れのキスはしなくても?」

 「恥ずかしいわママったら。人目もあるし、第一あたしは人妻です!」

 「あら。人目がなければ、キスしちゃうのかしら、あなたたち。
 そんな風に聞こえました。
 あはは。冗談です、
 じゃあね康平くん、千佳によろしく。
 美和子ちゃんは私が責任をもって実家へ送っていきます。
 また遊びに来て頂戴。短い首を、長くして待っていますから。うっふふ」

 美和子を乗せた辻ママの車が遠ざかっていく。、
実家がある次の集落へ向かって、朝の日差しの中を遠ざかっていく。
斜面を走り抜けていく県道は、粗末な簡易郵便局を境にして人家が消えていく。
田んぼも点在するが、斜面にひろがっているのは野菜が実る畑ばかりだ。