からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話
からっ風と、繭の郷の子守唄(39)
「朝帰りの康平を待っていたのは、笑顔の母と桑の木に巣食うアメリカ君」
「あ。そこで結構です。酔い醒ましで少し歩きます」
県道は上毛電鉄に沿って、赤城の南面を西へ伸びていく。
上毛電鉄の有人駅、『新里駅』を過ぎたところで康平が運転中の辻ママに
「とめてください」と、合図を送る。
「あら。遠慮しなくてもいいのに。
行くわよ、千佳ちゃんちの前まで。久しぶりだ、顔も見たいもの」
辻ママが、康平の母の名をポンと口に出す。
そんなふうに呼ばれていた、母の愛称が突然出てきたため降りる支度を
していた康平が、その場で目を丸くして固まってしまう。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話 作家名:落合順平