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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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眠りの庭 探偵奇談2

INDEX|36ページ/37ページ|

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中庭には今日も生徒の声が溢れている。昼休みの中庭。これまであったことを、伊吹は初めて瑞から聞いていた。並んでベンチに腰掛けて。

「狐さんか…この庭にあの祠に、そんな由来があったなんて知らなかったよ」

不思議な土地に宿る不思議なものは、まだまだあるのかもしれない。伊吹らが知らないだけで。

「ここ、前もいい感じの雰囲気だったけど、いまはより明るい気がしますね」

思い思いに過ごす生徒たちを見ながら瑞が言う。すがすがしいというか、表情がさっぱりしている。重役から解放され、安堵しているようだった。

「先輩の怪我、大したことなくてよかった」
「大げさだったよな。もうかさぶたなってる。この怪我も、工事中止に一役かえたならよかったよ」

伊吹が言うと、はあ?と瑞が睨みつけてくる。

「なにバカなこと言ってんの?いいわけないでしょう」

こっちは心配したんだ、と頬を膨らませる瑞。怒っている。それはそうかと反省する。

「ごめんて」

素直に謝るが、瑞は伊吹を見つめたまま黙っている。あの日もそうだった。怪我をした伊吹に、こんな目を向けていた。不安そうな、泣き出しそうな瞳。

このまえ、別れ際感じた奇妙な既視感が呼び覚まされる。
いつかどこかで別れて、二度と会えなかったような微かな感覚。