眠りの庭 探偵奇談2
「おまえのことを、ずっと守ってくれたひとだよ」
背後で見守っていた浅田を手招きし、瑞は静かに言った。
「お、お狐さん」
浅田には、狐の姿は見えていないのか、自信なさげに目を泳がせている。
「こんなことになって申し訳ない。申し訳ないです…」
浅田は繰り返し詫びて頭を下げた。
「でも、これ以上生徒たちを傷つけないでください。工事はどんなことをしても止めさせますから。どうか、お願いします。お怒りが収まらないのなら、それはわたしの責任です。だからどうか生徒たちには」
どうか、どうか、と繰り返す浅田は、泣いているかのように見えた。これは彼の罪ではないのに。
「…消えた」
瑞が呟く。
「どうなったの?」
「わからん。納得してくれたのかどうか…ただもう姿はないし、怒りの感情も収まっている」
帰ろう、と促された。なんだか後味が悪いような気がして、郁はその場を離れられなかった。
「…許して、くれたかな?」
「わからない。でも、俺たちにできるのはここまでだと思う」
浅田もが不安そうにしているのが気がかりだったが、そう言われると引き下がるしかない。
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作品名:眠りの庭 探偵奇談2 作家名:ひなた眞白