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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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眠りの庭 探偵奇談2

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「おいもうよせって!」

いるのか、あの狐が。

「怒りで自分を制御することも忘れてるのか?」

瑞が声を張り上げるのに呼応し、地面が怒ったように突き上げてくる。

「きゃあ!」
「あぶねえから立つな、一之瀬!」

郁はとにかく地面に這うようにして震えるしかない。

「おまえがこんなことしなくても、工事はもう中止されるよ。けが人出てるし、生徒も怖がってるし、だから落ち着け」

それでも振動はやまない。間断なく揺らされる地面に、重機もガタガタ揺れている。校舎の窓ガラスも、ビリビリ音をたてて震えていた。このままじゃ危険だ。それは瑞も感じているようだ。しかし瑞の言葉がまったく届いていないようだ。霊感などない郁だが、この振動が怒りの感情からくることはわかる。狐は怒っている。説得も届かないほど。

「自分が傷つけられたからって、傷つけていいのか?」

冷静さを欠く声が、地響きに負けず夜に反響する。あの野郎、と、瑞が舌打ちするのが聞こえた。歯を食いしばる彼の目が、怒りに見開かれている。

「あのひとが怪我するようなことがもう一度あってみろ!!おまえの祠もなにもかも粉々にしてやる!!!」

その瞬間、地響きがやんだ。沈黙。虫の声まで聞こえなくなった。瑞の放つ雰囲気に、郁らはもちろん、夜風も草木の囁きも、みんな呑まれてしまったかのように。