小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

眠りの庭 探偵奇談2

INDEX|2ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 


へその辺りにぐっと力を入れて、郁(いく)は静かに呼吸を繰り返す。

(えーと、物見をいれてから、打ち起こし)

部活中の張りつめた空気が、今日はいっそう肌を指すようなのは、一年生の射形を主将が確認して回っているからだ。背後にいる宮川の気配は今日も氷のようだ。

(うわあ緊張する。そして宮川主将、今日もかっこいい~もー大好き~)

「集中」
「は、はい!」
「もういっかいはじめから」

だめだめ、集中しないと。気持ちを引き締める。巻き藁に向かって弓を引く練習を、郁は繰り返していた。

「手でひっぱるのではなくて、肘を引いて胸を割るイメージで。身体がまだ後ろに傾いているから、気を付けて」
「はいっ」
「交代。つぎ、河瀬」

ああ、緊張した。郁はほっと一息ついて弓を置く。

弓道の基本は射法八節。弓を持たずに、まずはこの身体の動かし方を覚える。郁ら一年生は入部以来、毎日この基礎を繰り返していた。巻き藁に向かって弓を引きながら、身体の隅々までに意識をとばし、繰り返していく。むやみに繰り返すのでは意味がない。一つひとつの動作に気持ちを込めて丁寧に。呼吸と身体の動きを重ねていく。集中すればするほど、身体も心も疲労が激しい。

カンッ

射場から乾いた音が響き、郁の周囲が一斉にそちらを見た。

「須丸(すまる)か、いい弦音だな」

宮川の視線を追う。ひときわ美しい瑞(みず)の背中が、郁にも見えた。