スケッチ ♯2
施設保育士という仕事
わたしたちみたいなものが持っている今日は
いつかは忘れてしまうような
なんでもない一日
たけれどそれを
大切に思えるわたしを
ちゃんと大事にしてあげようと思うの
公園に向かうマイクロバスの中で
幼児を胸に抱えて
わたしみたいな人間の心音に頭を預けるその小さな子どもに
なにも返せるものはないのにな
と
あくびを噛み殺した
何度も何度も
繰り返す恐怖は押さえようがない
心がついていかないから
やっぱり手放すしかないのだ
と
その度に誰かが裾を引くから
だから痛いのにやめられない
胸に抱えた幼児の
焼けそうな体温がいとおしい
しごと と書いてやまいと読む
終わりのない慢性疾患
大丈夫
上手に付き合っていけるなら
死に至ることはありません
処方箋には子どもの育ちと笑顔
治療費は行事の計画書
楽しい一日にしてあげてくださいね
にっこり笑った医者は
施設長だったか法人の偉いひとだったか
継続通院は面倒で
忘れてしまったけれど
寄り添い生きていくことの息苦しさを
わたしよりあの子達が知っている
守るために傷つけるから
手当て は
必要ですか
いくらでも手を握ってあげる
望まなくても
離さない
それがわたしたちの
わたしの
汗ばむ幼児の頭を撫でた
わたしたちみたいなものが持ってる今日は
いつかは忘れてしまうような
何でもない一日
どうぞ忘れて
忘れて
あなたの忘れていく一日が
あなたの何でもない一日が
いつか大切に一日になる日のために
わたしたちが持っていく
どうか一緒に
未来へ