BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン
『その声はもしかして―――、陸くん?』
陸は、電話の声に聞き覚えがあった。
「陸、誰からだ?」
陸に変わって電話に出た海は、直ぐに理解った。
「椎名さん…」
「ちょっと出て来られるかね?」
「いいですよ。雪も止んでいるし、これから夕飯の買い出しもありますし」
今頃何の用かと思ったが、心当たりに思い立った。
恐らく、五年前の事。妙な悪戯心を起こしたばかりに、事が大きくなり過ぎた。
こんな時、空がいれば話をはぐらかせるが家にはいない。
「う~ん、椎名さん苦手なんだよなぁ…」
改めて、当時の自分は愚かだと思う海であった。
作品名:BEAT~我が家の兄貴はロックミュージシャン 作家名:斑鳩青藍