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幻燈館殺人事件  前篇

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 帝都からの鉄道に揺られ辿り着いた小さな駅から緑溢れる野道を三里も行くと、ふいに視界がひらけ盆地の中に村落が見える。村人数一千人ほどのこの九利壬津村の中心には、ひと際大きな館がある。人呼んで‘幻燈館’。――その館には、代々この村を収めている九条の人間が、わずかばかりの使用人と共に住んでいる。陽が落ちるとその名の通りにぼんやりと明かりが灯される荘厳なその館は、まさにこの村の象徴であり、中心であった。