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 岬は、彩佳による記者会見が終えても忙しい日々が続いた。だがそれは良い意味で忙しい訳ではなかった。学校ではクラスの皆に理由を聞かれるし、教師にさえ聞かれた。そして来年の春まで埋まっていたスケジュールの予定も彩佳引退によって全てキャンセルになり、弱小事務所ゆえに、その退路を絶たれた。
 つまり、芸能事務所アースは潰れたのだ。
 所属していたタレント達の進路もまだ決まってもいないのにだ。

「…はぁ」

 岬は学校の机の上で一人溜め息を吐いた。
 どうしようもない程に絶賛迷走中の不甲斐ない自分にだ。彩佳は記者会見でああ言ったが、自分に才能がない事は自分が一番分かってる。

「何がしたいんだろう…」

 取り敢えず休みたい。そう思った。
 今までが異常だったのだ。あんな休み無しのスケジュールで3年も安い給料で働かされていたのが。あんな弱小事務所で3年で人気トップになれた、まるで夢を見ているような感覚だ。だが事実の日々がそこにはあった。
 岬はスマートフォンを出す。
 平岡社長からの連絡は未だ来ない。

「忘れられてるのかなぁ…」

 だとしたら仕方ない。自分は元々ルーレットの中でも存在感が薄い方だったのだから。

「本当に、どうしよう…これから……」
 
     ●

 彩佳の記者会見から3ヶ月が過ぎた。
 芸能界の移り変わりというのは早いもので、もう既に私達ルーレットが居た位置に別のアイドル達がいた。
 大手女優事務所が初の試みで作ったアイドル部門からのグループで人数は6人。
 グループ名は『スターズ☆』。
 メンバーは現在絶賛売り出し中の伊藤弥生(17)を中心に、水野亜紀(17)、遠野恵美子(18)、原嶋ユリカ(16)、齋藤一美(15)、前野林檎(14)の6人組だ。
 勢いがある新鋭若手女優の卵達だった。
 今やテレビで彼女達を見ない日はない。
 しかも同じ芸能学校に通っているし、一人は同じクラスだしで気まずい。
 そんな中、岬達のクラスである二の梅は9月末に行われる学園祭の出し物を提案した。
 スターズの水野亜紀がいるという事で、アイドルに纏わる何かがいいと言う意見があったが、それじゃあ個になってしまうという担任からの意見が出て却下になった。
作品名:ステップ・アップ!! 作家名:本宮麗果