乙女たちの幻想曲 第1回 Secret Garden
「お待たせ。白い花を持ってきたわ」
そう言って、彩はベッドの中の水音に近寄り、1輪の白い花を見せた。彼女はうれしいため息をつき、小さな声ながらもうれしそうに
「ありがとう、彩」
と言った。そのあと、彩は水音の頭に自分の手が届く位置まで椅子を持っていき、暗いピンク色の髪に白い花を挿した。
挿しているとき、2人は視線が合った。― そのときの彼女たちの微笑は、この上なく純粋であった ―
やがて、水音の髪に花を挿し終わった。彩の予想どおり、白い花は親友をより美しく飾っていた。
「きれい…とてもきれいよ、水音」
彼女の言葉を聞いた水音は心からの笑顔を見せ、声を振り絞って話し出した。
「ありがとう。…いよいよお別れだわ。あなたは、西にある『あの庭』へもう一度行って。そうすれば…」
― 数秒間、この部屋から一切の音が消えた。
彩は親友の名前を口にした。しかし、彼女は目も口も開かなかった。彼女の状態を悟るや、彩の胸は青く熱くなり、親友の名を叫んだ。
そして彼女は椅子から立ち、足早にドアの前まで行くと、勢いよく部屋を出た。
作品名:乙女たちの幻想曲 第1回 Secret Garden 作家名:藍城 舞美