迷子の雲とさようなら
変わるも変わらぬも結局同じ報われない一方通行
何が起こった。
考えろ。考えろ。
俺は篠原寿(しのはらことぶき)だ。昨日まではちゃんとした学生だった。
ところが世界は一晩寝ただけで変わっちまった。
朝起きてみれば、昨日と違う部屋が俺を待っていた。
少し小さくなった俺の部屋。
机も漫画もゲームも何も、昨日見ていたものとは違う。
例えば机。木製のガタガタした机になっている。昨日までは金属であった筈だ。
漫画も、少し絵の入った分厚い本に変わっている。
「何があった・・・?」
自分自身に問いかける。
答えなど返ってくる筈がなかった。
落着け。学校へ行こう。
ふすまへと変化した扉を開き、着替えを探す。
学生服だと思い、白のシャツを引っ張り出す。
が、原型を留めているものの、少し違う。ボタンも少し大きく、まるでファンタジー漫画の主人公のような衣装に変わっているではないか。
ズボンらしきものも引っ張り出してみた。
やはり違う。
ベルトが調度後の部分より二手に別れており、ズボンの下部へと金属によってくっ付いている。
「どういうことだよ・・・」
外を見た。
やはり他の家も少し小さくなっている。
そして街を歩く人々も、明らかに違っていた。
それはいままで漫画やなんかで見たようなファンタジー世界の住人が着るような衣装を着た者が、あたかも当たり前だと言うように堂々と歩く世界であった。
「まじ、かよ・・・」
腰が抜ける。
何が起きた?この一晩で一体何があったのだ?
問い掛けの答えなど返ってこない。
「どうしたのー?寿―」
母の声だ。
階段を登る音がする。
ガララ、と襖が開く。
「なーにやってんのォー。ほら、早くしたくしちゃってチョウダイ」
母はバサバサと洋服を床に落とす。
見慣れない装飾品が沢山出てくる。
「母さん・・・」
「なァーによォ。」
「これ、どうやって着るの・・・?」
切実な思いが母を仰天させる。
「あんた・・・。馬鹿にしてんのかい?」
母は苛々した表情で部屋を出て行った。
「うそ・・・、ちょっと、待ってよ!」
母は「早く来い」と一階から言う。
よく分からない洋服に腕を通す。
ずしりと少し重くなっている衣装。
腕に付けるらしきよく分からない装飾品。
適当に、本能に任せて洋服を着ると、俺は一階へと足を運んだ。
作品名:迷子の雲とさようなら 作家名:藍野雅