迷子の雲とさようなら
空の色など分からずに
『警告 警告』
カタカタ
キーボードを打つ音と、興奮しきった荒い息が部屋に響き渡っている。
『新しい世界をインストール中』
『インストール完了』
『これより世界を変えます プレイヤーを決めて下さい』
ボン
画面内には細々した世界地図。
「面倒だなぁ。」
カチッ
適当な所をクリックする。
『プレイヤーの名前･篠原寿(しのはらことぶき)』
「日本人かぁ。」
『プレイヤー･寿がこれから出会う主なキャラクターを3人から5人まで選んで下さい』
『一人目を選択して下さい』
『一人目が選択されました』
『二人目を選択して下さい』
『二人目が選択されました』
『三人目を選択して下さい』
『三人目が選択されました』
『四人目を選択しますか？』
『四人目を選択して下さい』
『四人目が選択されました』
『五人目を選択しますか？』
『五人目が選択されました』
『世界を変えますか？』
『世界を変えています しばらくお待ちください』
『１／４』
『２／４』
『３／４』
『完了しました』
『世界は変わりました』
画面が赤に染まってゆく。
目が痛くなる原色そのままの赤がモニターを侵食してゆく。
『もう後へは戻れません』
赤く染まるモニター上に、黒い活字でそう映し出された。
くくく
男は笑う。
「頑張ってね。寿クン」
いやらしい笑みを浮かべるその男は、息を大きく吸うと、「あはははは･･･」と再度笑い出した。
作品名：迷子の雲とさようなら 作家名：藍野雅