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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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人食いトロルと七色のバナナ

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「おじさんは、人食いトロル、なんだよね?」
「そうや。もちろん、そうや!」
 ジヴは自分に言い聞かせるように、大きな声で言った。
「じゃあなんでおじさんは僕を食べないの?」
「…」
 キーゴが言うと、ジヴは黙ったまま、またガックリと肩を落とした。

  6、ジヴの悩み

実はジヴには悩みがあった。人食いトロルに生まれながら、人間を食べることが出来ないのだ。たとえ口に含んだとしても、美味しいと感じることが出来なかった。
 トロジカやカモウシなどの獣の肉や、川魚の肉は辛うじて食べることができたが、人間の肉は無理だった。
 本当のことを言えば、ジヴはホシガタダイコンやキヤセゴボウ、トカゲイチゴやバクダンオレンジなどの野菜や果物を食べるのが好きだった。
 森に迷い込んだ人間を驚かせ、逃げ惑う様を見るのは好きだったが、そこから食べるまでの行程も、ジヴは大嫌いだった。
 しかし、人食いトロルに生まれながら、人を食べないなんて道理は人食いトロルの世界では通用しなかった。ジヴの母親は、小さい頃からジヴの好き嫌いをなくそうと、ありとあらゆる手段を尽くした。
 細かく刻んでスープに入れてみたり、もしかしたら病気なのではないかと、高名なお医者様から苦い薬草をもらったりした。
しかしどうしてもジヴの肉嫌いは治らなかった。
 肉を食べさせたい母親とそれを受け付けない息子。
最近ではジヴの母親はジヴの肉嫌いはただの食わず嫌いだと決め付けているようだった。  
そのせいでジヴは母親とケンカが絶えなくなった。ジヴもジヴで頑固だったので、口論になると譲ろうとしなかった。   
そして今朝ついにジヴは家を飛び出してきてしまったのだ。

  7、キーゴの探し物

 ジヴは自分の悩みをポツリポツリと呟くように、かいつまんでキーゴに話した。その間、キーゴは全く瞬きをせず、真剣に話を聞いていた。そして聞き終わった後、にっこり笑ってこう言った。
「僕はいいと思うけどな〜。好き嫌いは誰にでもあるもん。僕もカラクチソウ食べれないし。お母さんは大きくなったら食べれるようになるって言ってた」
「それはな、お前が人間だからや。人間はいろんなもの食う。肉でも野菜でも魚でもな。人食いトロルとはちゃうねん。俺のはアレやぞ。肉食動物が突然草食いだしてんねんぞ?お前サマヨイオオカミがキャベツ食ってんの見たことあるか!?」
 例えが面白かったので、キーゴはクスクス笑った。
「ううん。見たことないよ」
「そやろ。だからな、これは異常事態やねん。俺だって、食えるもんなら食いたいわ。他の連中にとってお前なんかご馳走やで。一口で食おうか、薄くスライスして味わって食おか、もうヨダレだらっだら垂らしながらそんなことばっか考え出しよるわ。でもな、俺はあかんねん。お前を例えば食うとする…おえー!ほらな、もう吐き気してくんねん」
「うーん、病気なのかなぁ?」
「子供の頃からくっそまずい薬なんか何百回と飲んできたけどな。あかん。自分でも、よう分からんわ。オカンとはケンカばっかりで、ついに飛び出してきてしもた。今さらおめおめと家になんか帰れへん」
「ふーん…」
 ジヴの言葉を聞きながら、キーゴは何か考え込んでいるようだった。
 そして、突然何か思いついたように叫んだ。
「そうだ!おじさん、いいことがあるよ!」
 ジヴはびっくりして聞き返した。
「な、なんやねん。突然」
「おじさん、僕の探し物探すの、手伝ってよ!」
 ジヴにはキーゴが何を言っているのか、理解できなかった。
「な、お前の探し物手伝うのと、俺の今の話になんの関係があんねん」
 それを聞くと、キーゴはいたずらっ子のようにうふふと笑った。
「僕はね、七色のバナナを探してるんだ!もしかしたら、そのバナナで、おじさんの肉嫌いが治るかもしれないよ!」

  8、七色のバナナ

 七色のバナナ。ジヴもそのバナナのことは知っていた。
 七色のバナナはジヴが今いる森の、そのまた遠くの山を越えて、その先にある「一島の密林」に生えていると言われるバナナだった。
この珍しいバナナは一房に必ず七本のバナナがなっていて、それぞれ赤、青、黄、オレンジ、緑、紫、茶色をしていた。どれ一つとして同じ味はなく、そしてそのどれもが大変美味だという話だった。 
 それだけでなく、その内の一本である茶色のバナナは、食べるとどんな病でも治すと言われ、万が一市場に出回ればかなりの高値で取引された。    
それ故に、非常に入手が困難なのにもかかわらず、多くの人間がそのバナナを求めて旅に出た。ジヴはそんな人間たちを何人も知っていた。
「なんや、お前も七色のバナナ狙いやったんか」
 ジヴは少し軽蔑したような視線をキーゴに向けた。
「お前も…って?僕の他にも七色のバナナを取りに来ている人がいたの?」
「いるもいないも、この森に来る人間の連中なんて大抵そればっかりやからな。お前みたいにちんまい奴は初めて見たけども」
 七色のバナナが生えると言われる「一島の密林」に行く為には、必ずこのジバヤーゴの森を通過しなければならない。
 しかし、ジバヤーゴの森は人食いトロルを始め、多くの危険な生き物たちが生息し、「死の森」と呼ばれるところだった。生きて森を抜けた人はほとんどおらず、それでも人々はバナナを求めて、この森を通ろうとした。
「昔、オトンが人を襲うとこ見ててな、人間は馬鹿やなー、思とってん。バナナ取るどころか、自分、ただ俺らに食われに来とるだけやろって感じやったしな。そうか、お前も馬鹿やったんやな」
 それを聞くとキーゴはぷぅっと頬を膨らませた。
「僕そんな馬鹿じゃないよ」
「馬鹿も馬鹿、大馬鹿や。ほとんど手に入れる可能性のないもん求めて、死にに来てるようなもんやん。まあ、そのおかげで俺らは生きていけんねんけどな。現に俺が普通の人食いトロルだったら、お前の人生、十五分前には終わっとったとこや」
「そうだけど、そうじゃなかったもん。結果オーライだよ」
 キーゴは歯を見せながらにぱっと笑った。
「まあ、今この瞬間はな。三十分後にはどうなってるか分からへんけど。さっきも言うたけど、お前みたいなんはこの森の他の連中からしたらご馳走にしか見えへんからな」
「だから、おじさんも一緒にバナナ探しに行こうよ!おじさんが付いててくれたら、僕、他の獣たちに襲われずに済むよ」
 それを聞いてジヴは呆れたように言った。
「アホらし。なんの義理があって俺がお前とバナナ探しに行かなきゃならんのや」
「でも、おじさん…今は家には帰れないんだよね?それで悩んでるんでしょ?」
 キーゴの言葉にジヴは少し喉を詰まらせた。
「…いや、でもきっとしばらく経ったら帰れるようになるわ。こういうのは時期を見計らってやな…」
「でも、肉嫌いが治らなかったらまた同じことの繰り返しになるよね?」
 これにはジヴがも返す言葉がなかった。キーゴは続けて言った。
「茶色のバナナがあったら、おじさんの肉嫌いも治るんじゃないかな〜?それに、七色のバナナは全部ぜーんぶすっごく美味しいって評判だし」
 それを聞いてジヴはゴクンと唾を飲み込んだ。腹が減っているせいか、もともと果物好きなジヴは急にそのバナナを食べてみたくなった。