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シーラカンス
シーラカンス
novelistID. 58420
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人食いトロルと七色のバナナ

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いつの間にか木から降りてきたキーゴはジヴの手の中のバナナを覗き込みながら言った。
こうして二人は、ついにバナナを手に入れた。
「よかったね、おちびちゃん。それでお母さんの病気を治してやんな」
「うん!」
 キーゴが満面の笑みで笑うと、マージョリーも微笑んだ。
「さあ、もう日が陰ってきた。あたしはそろそろ海に戻るよ」
そう言うと、マージョリーはくるりとジヴたちに背を向け、海の中へ戻って行った。
「ありがとう!おばあさん」
「ありがとなー!」
二人はだんだんと小さくなるマージョリーの後姿に、いつまでも手を振り続けた。

38、ハンターに狙われて

こうしてバナナを手に入れたジヴたちは、無事再びジバヤーゴの森へと戻って来ることが出来た。
「しっかし…あー!なんかひっさびさに帰ってくるとやっぱり落ち着くなぁ。森が一番や」
ジヴは大きく伸びをして言った。すると、バナナを抱えたキーゴが非常に言いづらそうに話を切り出した。
「ところで、ジヴ?このバナナ、結局一房しかなってなかったじゃない?」
「それがなんやねん?」
「病気が治る茶色のバナナも、一本しかないよね。それでね…」
キーゴの表情を見れば、どうしたらいいのか迷っていることは一目瞭然だった。
「せやなー…」
キーゴの言葉にジヴが返事をしようと思った、その時。
「おい!いた、見つけたぞ!トロルだ!トロルがいるぞ!」
前方の茂みの方から人間の叫ぶ声が聞こえてきた。
「ほんとか!?」
それに答えるようにもう一人の声がした。
声の聞こえたあたりの茂みがガサゴソと揺れたかと思うと、二人のハンターが現れた。 
一人は痩せていて白い帽子をかぶった男、もう一人は図体がでかくて口ひげを生やしている男だった。二人はそろって背中に猟銃を背負っていた。
「いた!あいつだ。思った以上に大きいな。やれるか?」
「隣にいるのは、例のこどもじゃないか?」
「きっとそうだ。母親に聞いていた特徴とそっくりだぜ」
二人はジヴ達を見て、何やら大声で話し合っていた。
「おい、キーゴ。あいつら多分トロル退治に来たハンターや。話を聞く限り、お前の母親に頼まれたんちゃうん?」
 ジヴは険しい表情になり、キーゴに言った。
「そうなの?そんな…お母さん」
それを聞いて、キーゴは一瞬信じられないという表情をしたが、ハンターたちの背中の猟銃を見つけると、顔を曇らせた。
「ジヴ…。よし!僕、ちょっと行ってくるよ!」
キーゴはジヴの方を振り返りながら言うと、いきなりハンター達のところに向かって駆け出しそうとした。
「おい、ちょっと待ち!突然何する気やねん」
ジヴが慌ててキーゴの肩を掴むと、
「だってあの人たちジヴをやっつけに来たんでしょ?僕、話して来るよ。ジヴは悪いトロルじゃないって」
「そんなんせんでええて」
数メートル離れたところからジヴとキーゴのやり取りを見ていたハンターたちは目を真ん丸にして顔を見合わせた。
「こいつは驚いた」
「トロルが人と会話してる」
「しゃべるトロルだ」
それを知ったハンターたちは何か良からぬことを考えついたようだった。
「こいつを生け捕りにして売っぱらったら…?」
「いい金になるんじゃないのか?」
それを聞いたキーゴはびっくりしてジヴの手を振りほどき、叫んだ。
「止めてよおじさんたち!ジヴは僕の友達なんだから!」
「キーゴ…」
しかし、ハンターたちの耳にキーゴの言葉は全く届いていなかった。
「お、おい。見ろ!あれは…」
「間違いない。伝説の七色のバナナだ…」
帽子の男が指差した先には、キーゴが持っていた七色のバナナがあった。ハンター達はキーゴに視線を向けた途端、七色のバナナに、目も心も奪われてしまったのだ。
ハンター達はどんどん邪悪な考えに捕らえられていった。
「しゃべるトロルに」
「七色のバナナ」
「…あのちびの母親の謝礼なんぞたかが知れてる」
「…それよりも、トロルとバナナを手に入れたら俺たちは大金持ちだぞ」
「どうする?」
「トロルは生け捕りにして、バナナは隙を見てガキから奪おう」
ハンター達の秘密の会話が聞こえたキーゴは、身を硬くしてバナナを抱きしめた。
「だめ!だめだよ!バナナはお母さんにあげるんだ。ジヴもバナナも持ってっちゃだめだ!」
しかしハンターたちは聞く耳を持たなかった。それどころか、恐ろしいことに口ひげを生やした男は、背中の猟銃を手に取り、それをキーゴに向けてきたのだ。
「ふん。聞こえちまったか。耳のいいガキだ。あいにくだがお前の都合なんぞ俺達の知ったことじゃない。こうなったら隙を見て奪うのは止めだ。おとなしくバナナをよこせ。さもないと…」
「え…」
口ひげの男が銃を構えながら、ゆっくりとキーゴに近づいて来た。
「お前!キーゴに何すんねん!」
キーゴのピンチに、ジヴはハンターに向かって突進した。
「おい!気をつけろ!」
「ひぇっ!く、来るな!」
帽子をかぶった男が叫んだ。キーゴに気を取られていた口ひげの男は、よほど焦ったのだろう。「う、うわぁあああ!」という悲鳴と共に、一発の銃声が森に響き渡った。
それと同時に左胸の下に鋭い痛みが走り、ジヴはそのまま意識を失ってしまった。

39、大ピンチ

「うっ!」
ジヴの苦しげなうめき声とともに、ドーンという音があたりに響き渡った。それと同時に、ジヴの巨体は砂煙を上げながら地面に倒れこんだ。
「ジヴ!?ジヴ!?」
 キーゴはびっくりしてバナナを抱えながらジヴに駆け寄った。
「おいお前、生け捕りにするのに、撃っちまったら元も子もないだろうが!」
 帽子の男が口ひげの男に怒鳴った。
「す、すまん。つい」
「ジヴー!ジーヴー!目を開けてー!」
 キーゴはバナナを地面に置き、ジヴの頭を両手で挟みこむと、出せる限りの力で揺さぶった。
しかしジヴはぐったりとしたまま、目を開けようとはしなかった。
「そんな…そんな…」
「ちっ。仕方ない。やっぱりガキの方だけでも連れて帰るか」
 帽子の男は舌打ちをすると、キーゴの方に向き直った。
 キーゴはしばらくジヴの顔をじっと見ていたが、再びバナナを抱え上げると、キッと顔を上げ、ハンター達をにらみつけた。
「おじさん達、どうしてこんなことするの!?ジヴが何をしたっていうんだよ!」
 キーゴの言葉に、帽子の男は首をかしげ、肩をすくめながら言った。
「おいおいおい。少年よ。勘違いしてもらっちゃあ困る。俺達は君を、人食いトロルから助けてあげたんだ。感謝されこそすれ、怒られる筋合いなんてない。我々は君の母親に頼まれて君を迎えに来たんだ。さあ、一緒におじさん達と村に帰ろう」
 帽子の男は優しい言葉とは裏腹に、鋭い目つきで両手を前に突き出しながら、キーゴの方ににじり寄ってきた。
「嫌だ。おじさん達、さっきと言ってることが全然違うよ。僕は行かない!バナナも絶対に渡さない!」
バナナを抱えて走って逃げようとするキーゴを帽子の男が無理やり抱き上げた。
「ほら、大人しくしろ。こいつ!」
「嫌だ。嫌だ。嫌だ!嫌――だーーーー!」
キーゴは、帽子の男の腕の中で暴れながら、思い切りその二の腕に噛み付いた。
「いってー!こいつ噛みやがった!」
「はーなーせー!」