目的地にて
少年の過去
すると、1人の男性が2人のそばで立ち止まった。
「ナツハ」
名前を呼ばれたナツハは、その男性のほうを見た。
「あら、ヤスキくん」
美少年も、上半身を起こしてサカイヤスキのほうを見ると、少し明るい
「あ、どーもです」
の一言とともに軽く頭を下げた。ヤスキもとりあえず
「あ、どーも」
と頭を下げたあと、少年の顔を見て驚いた。
「き、君、もしかしてカミヤコウジくん?あの子役の」
名前を告げられた少年は、またもうれしい驚きに満ちた顔をした。
「あ、はい、そうです」
ヤスキはすっかり興奮した。
「いやー、うれしい、実際に会えて」
今度はコウジが興奮しながら言った。
「覚えていてくれて、ありがとうございます!」
このやり取りに、ナツハは首を右に傾けた。
「え?子役?この子、子役だったの?」
ヤスキは大きくうなずいた。
「そう。この子、すっごい人気子役だったんだ」
ヤスキにベタぼめされているコウジは、照れながら首を横に振った。そんな彼に代わり、ヤスキがこの元子役について話した。
「この子ね、随分昔、何か特撮物のメイン出演者の1人で、このとおりの外見だから子どもはもちろん、大人の女性にも人気者だったんだよ」
コウジの過去の話を聞いて、ナツハはますます彼に興味を持った。
「へえ、それほどの人気者だったのね」
「本当に。彼、スタイルいいから中高生向けのファッション誌の表紙も飾ったことあるし…」
ヤスキがそう言いかけると、
「いや、やめてください。これ以上ほめられると俺、照れ過ぎて倒れますよ」
とコウジ自身がさえぎった。ヤスキは笑いながら話を止めた。