からっ風と、繭の郷の子守唄 第26話~30話
からっ風と、繭の郷の子守唄(30)
「深夜になると人が集まるスナック店は、同業者たちの癒しの空間」
中央に20台近くの車が停められるスペースが有る。
その周囲を、ぐるりとコの字の形に、飲食店が取り囲む。
3軒のスナックと、1軒のフィリッピンキャバレーが営業中だ。
深夜を迎えたというのに、客足が途絶える気配はない。
まず目を惹くのは、ピカピカに磨き込まれたベンツやBMWなどの高級外車。
負けずとレクサスやクラウンなどの、国産の高級車もドンと並んでいる。
高級ホテルか名門ゴルフ場の駐車場といった雰囲気に、軽い違和感を覚える。
テナントの中に、客の車を代行運転する事務所が2店舗もある。
12時を過ぎても、賑わいを見せるのには理由がある。
飲み屋街を色どる多くの店が、深夜12時でその日の営業を終える。
風俗営業法の規制を受けているためだ。
風俗営業は、客に遊興と飲食する業種を指す。
指定を受けるのは、接待を主体とするスナックやキャバクラ、バー、クラブ、
キャバレー、ダンスホール、パチンコ店、マージャンなどの職種だ。
これらの店舗は、午前0時より日の出までの営業は禁止されている。
ただし、ごく一部にだけ例外が認められている。
店に「バー」や「スナック」などの名称が付いていても、客とカラオケで
デュエットしたり、接待の行為がなければ、風俗営業の許可を取る必要はない。
飲食するだけであれば、保健所が発行をする食品営業許可証だけで充分だ。
午前0時から日の出までの時間帯に、客へ酒類を提供する場合でも、
食品営業許可の他に、深夜における酒類提供飲食店の届出をすれば、
法律上、何の問題もない 。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第26話~30話 作家名:落合順平