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赤い帽子の

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ヒロミが物好きにも見たいというヘクソカズラはどこにでもある。だからヒロミの近所にある大きな公園に行く約束になっていた。夏も終わりに近くなっていて湿度は低いのだが、日差しは強い。

「帽子被ってきてよかった。ルソーさんも被ってくるとは思わなかったので、最初わからなかったぁ」
「ああオレの場合はヒロミさんより頭が太陽に近いからね」
「えっ、ははは、確かに。太陽の距離を考えたらほぼ同じだけどね」

なめらかに会話は続いていたが、ヒロミがオレのTシャツの袖を掴んだ。オレはやや後ろに並んでいる赤い帽子が目に入った。
「ちょっと歩くの速いぃ」
オレは普通に歩いているつもりだったが、ヒロミには早足だったようだ。
「足の長さが違うんだからね」
「そうか、考えてもみなかった」
「考えてよー」
ヒロミが笑った。赤い帽子が揺れる。

  赤い帽子ばかり目に入っていて
  帽子とデートしているようで
  可笑しくてにやけてしまうけど
  もしかしたらキミの作戦かい
  歳相応のもろもろを隠すための
  その作戦に乗って過ごそうか

つい先ほど初めて会ったばかりとは言えないほどに打ち解けていた。同じコミュの私の知らない会員の情報やら二人ともコメントなどをしている会員の話や、読んだ本の話などをしているうちに公園に入っていた。

どこにでもある筈のヘクソカズラは、園内の整美が良すぎて見当たらなかった。それはたぶんヒロミが花壇を基準に案内しているからだろうと思ったが、興味のある花もあったのでその写真を撮りながら歩いていた。

駐車場とトイレのある区画まで歩いてきた時に、ついでだからとヒロミがトイレに入っていったので、オレは駐車場の奥のフェンスに向かって歩いていった。おそらくあれが目指している草だろうと思いながら。

フリルのついたスカートのような小さい花。その内側が紅紫色、その花の名が屁糞葛。もちろん花の姿から名付けられた名前ではなく、その葉を揉むと悪臭がするからである。

「もしかしたらその花?」
後ろからヒロミの声がした。そのまま写真を撮りながら「そう、これがかわいそうな名前の花」と言った。
動く気配がして、赤い色が目の端に見えた。そして汗の匂いと混じったのかもしれない甘い匂いを感じた。
「可愛い花だね」
その優しい声と、たった今感じてしまった(女)に少しうろたえのような感じを覚えた。普通なら「うん、そう言うヒロミさんも可愛い」と言って笑ってしまうところなのだが、このままじっとしていたいと思った。

作品名:赤い帽子の 作家名:伊達梁川