からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話
からっ風と、繭の郷の子守唄(23)
「地酒のような美和子の歌と、尋常小学校中退の話」
「あら。もうずいぶん盛り上がっていますねぇ。今晩は、ママ」
水連へ楽曲を届けた美和子が、スナック由多加の扉を開ける。
店内は、隙間をつくるのが大変なほど人の姿がある。
「おっ、ようやく歌姫がやってきたぞ!」
大きく叫ぶ声に、一斉に店内から歓声が上がる。
「おめでとう、ママ」貞園の肩ごしから、ママへ美和子が声をかける。
店の奥から、「挨拶なんぞいつでもできる。いいから先に歌を聞かせてくれ!」
と早くも酔っ払った客から催促の声が飛ぶ。
常連客達が右と左へ体を寄せる。狭い店内に、わずかな隙間を作りだす。
ステージまでの通路を出来上がる。
「みなさん、いつもありがとう。
それではママの誕生日をお祝いして、「夜の糸車」から歌いはじめます」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話 作家名:落合順平