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からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話

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 「あとから美和ちゃんもやってきます。
 ママ。お誕生日 おめでとうございます。
 美和ちゃんから聞いたばかりで、何もお祝いの準備ができなかったけど、
 以前に褒めてくれたイヤリングを、プレゼントしたいと思います。
 あ、断っておきますが、パパから買って貰ったプレゼントじゃありません。
 私がまだ、真面目にアルバイトに明け暮れていた頃、どうしても欲しくなり、
 食費を切り詰めて買ってしまったものです。
 私の2番目のお気に入りですが、ママのお祝いに、はい、どうぞ」


 「あら、まぁそんな貴重なものを、こんな年寄りにプレゼントしてくれるの。
 嬉しいわねぇ・・・・
 一時はどうなるかと、ハラハラしながら見つめてきたけれど、
 あれから10年。なんとか光ちゃん(貞園のパパの実名)と
 続いているようです。
 男と女には色々あるけれど、誰がなんと言ったって無事に、
 長く続くのが一番なのよ」


 「そういえばママとマスターは、何年くらい一緒に過ごしたのですか?」


 「おやまぁ、ずいぶんストレートな質問だね。
 そうだねぇ。いろいろな計算の仕方があるけれど、お互いを知ったのが
 13の時。
 男女の関係になったのが、たぶん、17か18の時だったと思うわねぇ。
 それからは、くっついたり離れたりの繰り返し・・・・
 一緒に暮らしたのは、60年間のうちの半分くらいかしらねぇ。
 たぶん、30年前後だと思います」

 
 「ママ。変ですねぇ、
 2人で暮らした年数が、だいぶ不足しています。・・・・」


 「女ができれば、すぐにどこかへ飛んでいっちまうんだ。あの人は。
 糸の切れたやっこ凧みたいにさ。
 取り柄のない男だったけど、此処が火災にあって丸焼けになった時には、
 ずいぶんと頼りになった。
 みんなの先頭に立って、最後まで尽力した。
 根っからの遊び人で死ぬまで苦労させられたけど、そういう時には、
 役にたつ人だった」


 「へぇぇ・・・・じゃ、その後はまた仲良く、お二人で暮らしたわけですね


 「ところがどっこい。
 マスターは、常に根っからの遊び人だ。その後も、常に
 2~3人は愛人がいた。
 一週間のうちに家にいるのは、せいぜい1日か2日だ。
 最後の10年間くらいかしらねぇ。ず~と一緒にいられたのは・・・・
 もっともその頃になると、昔の元気は微塵も残っていなかったけどね。
 今思い出しても頭にきちゃう話だよ。あっはっは」


 「まったく。・・・・どこかの誰かさんとそっくりですねぇ」


 「そんなもんさ、貞ちゃん。仕事のできる男なんていうもんは。
 中途半端に生きてる奴ほど、真面目で勤勉だ。
 使える男や、仕事のできる男は、みんなおしなべて悪党だ。
 悪知恵は利くし、損得計算は早い。
 いい女を見れば、モノになるまでしつこく女の尻を追い回す。
 最近は草食系の男子が流行っているらしいけど、あたしらの時代には、
 男は狩猟本能をまるだしだった。
 みんないい女を見れば、その瞬間に目の色を変えたもんさ。
 もっとも、そんな男が沢山いたおかげで、私もこの水商売の世界で長い間、
 おマンマを食わせていただきましたけど、ね」