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からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(25) 
「グサリと突き刺さったその言葉は、たしかこれで2回目になる」

 「おい。胸にグサリと突き刺さったぞ。今の言葉は」


 「そう・・・じゃ、あたしの狙いは正確だったわけね。
 康平くん。あれから12年、もう後戻りはできないの。あたしたち」


 康平と美和子が初めて出会ったのは、高校へ通う電車の中だ。
赤城山の南斜面に沿い、県都の前橋市から織物の街・桐生市まで私鉄が
走っている。
山麓を走り抜けるこの路線を利用するおもな客は、高校生たちだ。
過疎化が進む寒村から、前橋市か桐生市の高校へ進学するからだ。


 康平が乗りこむと、前橋市内の女子高校へ進学したばかりの美和子が、
取り巻きの女子高生たちとともに賑やかに乗車してくる。
美和子たちが陣取るのは、決まって進行方向の左側のドア。
終点まで開かないドアの真ん前に陣取る。
仲良しグループの背中越しに、気がつくと美和子の瞳がこちらを見つめている。
美和子の視線を、反対側のドア越しに赤城山を見あげていた康平が、
ふと気がつく。
2人が見つめあうまで、それほど時間はかからなかった。