小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第21話~25話

INDEX|12ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「あんときは、俺も驚いた。
 東京へ行ったと聞いていたが、群馬へ帰っていたとは知らなかった。
 流しの演歌歌手として、突然の俺の目の前へ現れたんだ。
 別人かと思ったけど、やっぱりよく見たら、俺の知っている美和子だった。
 いやいや俺もあん時は、正直、腰が抜けるほど驚いた・・・・」


 「ふふふ。嘘おっしゃい。
 水車のマスターから、名前を明かされて、やっと私と気がついたくせに。
 私は最初から、あなただとちゃんと気がついていました。
 正直に言うとあなたのお友達の五六君から、あなたが呑竜マーケットで
 お店を出していることを教えてもらいました。
 でももうその時は、あたしは人妻だったの。
 いまだに独り身でいるあなたの前へ顔を出すには、
 さすがに抵抗がありました。
 それを、橋渡ししてくれたのが・・・・」



 「貞園だろう。
 俺の初恋の相手だということを、生き字引のゆかりママから
 仕入れてきたんだ。
 あいつ。よせばよかったのにと、酔っ払うたびに愚痴をこぼすくせに、
 あの時は得意満面で、君をこの店に引っ張ってきた。
 君は予想以上に綺麗になりすぎていた・・・・
 だから気がつかなかったのさ。初恋の君だったとはね」


 「綺麗になった?、ただ、お化粧が上手になっただけでしょう。
 でもね。あれから7~8年も経てば、女は変わります。
 私は、あなたが想定をしている以上に、変ってしまったと思っています。
 だからあなたは、あたしに気がつかなかったのよ。
 悪い女に変わりすぎてしまったため、あなたはわたしと気付かなかったのよ」

 
 「そんなことはない・・・・君の黒髪も、前髪は、昔のままじゃないか」


 「黒髪と前髪が昔と同じ?
 ああ、これ。そうね、高校時代のままですねぇ。言われてみれば・・・・
 上げちゃおうかなと思うんだけど、なかなかねぇ、
 今でも躊躇ったままなのよ。
 やっぱりこの髪型のままじゃ変かしら?」


 「変じゃないさ。でもなんで躊躇っているんだい?」


 「うふふ。黒髪を染めて、前髪をあげてしまうと変りすぎてしまって、
 あなたに見つけてもらえないでしょう?
 これ以上、あたしが悪い女に変わりすぎてしまったら。なおさらでしょ、
 うふっ」