意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編
「貸して欲しいな。駄目?」
「別にいいけど。いつ貸せばいい?」そして、僕は少し、言い淀む。「学校では渡せないよ。学校には行かないから」
彼女は僕の言葉を気にしない素振りだった。それが僕には不思議に思えた。
「今、家にあるの? CD」
「うん」
「じゃあさ、今から、取りに行ってもいい?」
「今から?」
「駄目?」
「別にいいけれど」
「じゃあ、一緒に行こう」小嶋は僕にイヤフォンを手渡し、ベンチからすっくと立ち上がった
僕は捻じれたイヤフォンのコードを受け取り、MDプレイヤーに巻き付けた後、ジーンズのヒップポケットにしまった。
作品名:意味を持たない言葉たちを繋ぎ止めるための掌編 作家名:篠谷未義