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からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話

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 「カラスの濡れ羽は別名を、濡烏(ぬれがらす)と言う。
 色彩は、物体から跳ね返ってくる光の波長によって成り立っている。
 対象が光を全て透過してしまう場合、透明になる。
 全てを吸収する場合は黒く見える。
 全て反射してしまう場合は、逆に白く見える。
 同じ色の塗料を塗っても、表面に細かい凹凸が多くなると光が乱反射する。
 そうすると、白っぽい感じに見えるそうだ。
 布が水を含むと、表面の毛羽が水を含んで寝てしまう。
 一時的に表面が滑らかになることで、色合いが濃く見える。
 それを、濡れ色効果と言うそうだ」


 「濡烏」は、この「濡れ色効果」により、本来は黒一色のはずの烏の羽が
黒味を増して輝きをみせる。
水分の効果により、さらに艶が増した色合いのことを指す。
このとき光による干渉が起こり、黒い羽毛の上に青や緑、紫などの
干渉色が浮かびあがる。
シャボン玉や油膜など、色が付いているように見えるのは、
この光の干渉により、波長が変化して、さまざまな発色を引き起こす。


 わかりやすい干渉色は、コンパクトディスクの輝きや、シャボン玉がある。
コンパクトディスクやシャボン球に、色彩はついていない。
微細な凹凸の構造により、光がさまざまに干渉するため、色が変化する。
見る角度により、色彩が変化することも干渉色の特徴になる。


 「モンゴロイド(黄色人種)に属する女性の髪は、黒っぽい色をしている。
 まっすぐな髪質が特徴だという。
 黒髪が水や髪油などを含むと、烏の羽を髣髴とさせるような
 干渉色を浮かべる。
 この場合、干渉色が浮かぶのは、健康な黒髪に限られているそうだ。
 ただの黒色ではなく、美しい干渉色が浮かんだ状態のことを、
 昔から日本では「濡烏」と言い、賞賛の言葉にしてきた。
 健康な髪に現れる”天使のリング”も、同じ構造を持っている。
 日本女性の黒髪は、長いあいだにわたって受け継がれてきた健康美の賛美だ。
 ”ミドリの黒髪”のみどりも、色彩を意味している言葉ではない。
 新芽や、若い枝ということだ。
 ミドリには、新しく生まれた、みずみずしいものという意味がある。
 新生児のことを『みどりご』と呼ぶ。
 だから美しくて艶やかな黒髪のことを、『みどりの黒髪』と呼ぶ」


 「赤い髪や茶髪ばかりが目立つ今のご時勢では、女性本来の美しさを
 大切にする大和撫子は、もういないという事か。
 なんだぁ・・・私が、髪を染めてしまったことが、結果的に康平と溝を深める
 事態になってしまったのか。
 そこまでは私も、気がつかなかったなぁ。
 黒ならOKでも、赤は信号と同じでアウトか。知らなかったなぁ~。
 ううん・・・残念」


 (そうだよねぇ。康平は今、長い黒髪の女性にときめいているんだもの。
 たったひとり、私には、心当たりがあるもの・・・・)


 なるほど、とほほ杖を突きながら貞園が、いまさらのように
カウンターで納得している。。