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からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話

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 「群馬大学の教養学部に編入した時は、黒髪だった。
 河川敷のゴルフ場で、キャディのアルバイトを始めた頃のことだと思う。
 たぶん20歳か、21歳の時だ。
 そこで、運命の出会いが、君にあったんだろう。
 例のほら、”君の名は”という、有名なエピソードが」


 「嫌みな奴ですね、康平は。
 なんでそんな昔の出会いを、いまだに覚えているの。
 『君の名は』というのは、昔に流行った日本の有名なメロドラマでしょう。
 私が言われたのは『見たところあなたは日本人ではないですね、お名前は』と
 と、ある男性から尋ねられただけです。
 『名前は、貞園です』と答えたら、『日本庭園の、ていえんか』
 と聞きなおすからいいえ、『貞淑を重んじる方の「ていえん」です』
 と答えたの。
 そしたらその男性が、
 『君はハキハキしていて面白いから、今度から専属キャディにしょう』
 と言ってくれました。その男性が」


 「そうか。それが君の、19番ホールの始まりになった訳だな?」


 「康平くん。
 事実に、誤解と悪意による歪曲が含まれています。
 確かに専属のキャディになりましたが、当の男性とは一線を守った上で
 交際することになりました。
 在学中は、「足長おじさん」として、支援してもらいました。
 でもね、康平くん。
 パパも学業が大切だからといって、支援してくれたけど在学中は
 ただの一度も、肉体関係はありません。
 すこぶる清い関係が続きました。
 念の為、あえて一言を申し添えます。」


 「そうだろうね。パパは市内でも有名人だ。
 家電産業直属の設備メーカーの社長さんがやることだ。
 事実は小説よりも奇なりと言う。
 魅力的な君の身体を前にして、卒業まで純潔を守ったというのは
 さすがに凄い。
 一流人のやることは違うねぇ~。ふぅ~ん。なるほど・・・・」


 「そうよ。だから私たちには、たくさんチャンスがあったの。
 あなたがもう一度、あのスクーターを飛ばして、赤城山にたくさんあるはずの
 ヤドリギの下でキスさえしてくれれば、私たちの人生は変わったの。
 でも、それはもう、はるかな昔の話になりました。
 今となっては遅すぎますねぇ」



 「えっ、・・・・ということは、髪を茶色に染めたのは
 早く気がついてくれという俺へのメッセージだったのか・・・・
 もしかしたら?」


 「他に、何か思い当たることでもあるのですか、あなたに。
 ・・・・うふふ、もうこのあたりでやめましょう、康平。
 本当のことばかり喋べりすぎてしまうと、自分が惨めになります。
 それよりも、なんで日本語では女性の美しい髪のことをみどりの黒髪とか、
 カラスの濡れ羽色などという、わかりにくい表現をつかうの?
 黒とみどりでは、色がまったく異なると思うけど・・・・」