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からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(17)
「みどりの黒髪と、髪はカラスの濡れ羽色」

覚悟を決めた康平が、もう一度、鍋の火加減を注意深く確認する。
頬をふくらませ、カウンターへ片肘つき、不満そうな目線を見せて
鋭く康平を見つめている貞園の前へ戻っていく。


 「変わってしまったのは、髪の色だ。
 日本には、女性の美しい黒髪をたたえる表現がたくさんある。
 ”髪はカラスの濡れ羽色”とか、”みどりの黒髪”という言い方をする。
 日本女性の黒髪を褒めたたえた素敵な言葉だ。
 しかし残念なことに、現代日本からそんな素敵な輝きを持った黒髪の
 日本女性は、ほぼ完全に消滅してしまった。
 君と初めて出会ったとき。長く美しかった黒髪は、実に衝撃だった。
 若い女の子達ばかりではなく、ご年配の女性たちもおしゃれ染めと称して、
 黒髪を茶髪や赤色に染め始めて、ずいぶん久しくなる。
 君がやってきた10年前には、もう、黒髪の日本女性はひとりもいなかった。
 台湾から来た18歳の黒髪の留学生は、実に新鮮だった・・・・
 日本女性が忘れてしまった黒髪の守り手のように、見えたほどだ
 君の黒髪が、気がついたら、流行りの茶色に変わっていた。
 いつのまにか君も、日本の文化に順応したようだね。」


 「なんだぁ。私の髪の色がかわったことか・・・・
 まったく想定外で、実はホッとした。
 そうかぁ。、生き方や信念まで変えてしまったねぇ、などと言われたら
 どうしょうかと、ドキドキしていたのよ。
 肩に力を入れすぎて損をしちゃいました。うふふっ。
 そういえばいつごろからだろう、私が、髪を染め始めたのは・・・・」