からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話
「すこぶるいい女だ。今日の貞園は。
それにしてもこんないい女をほったらかして、接待に駆け回らざるを得ない
社長業ってやつも、楽な商売じゃないな。
同情するよ。忙しすぎる社長にも。不運な目にあう君にも」
「それでもさ。本当に頭にくるんだよ、康平。
今日のお相手は、新規の取引先なのよ。
接待ゴルフをするから、目一杯めかしこんでゴルフ場へやってこいって、
社長が命令するから、私も久しぶりに発奮したの。
最後まで同行できるのかと思っていたら、ゴルフが終わった途端、
はい。今日はご苦労さま、帰ってもいいよときたもんだ。
私に目の保養として、ゴルフ・コンパニオンをさせただけなんだもの。
取引先の人たちを刺激しておいて、軽く飲んでから伊香保温泉あたりへ
繰り出して、女をあてがおうという腹つもりなんだ、あの野郎。
じゃあ、呼び出された私はどうしたらいいの。
暇を申し渡されたって、予定が無ければ、八方塞がりじゃないの。
エコノミックアニマルってやつには、自分勝手な人間ばかりが揃っているわ。
愛人をなんだと思っているんだろう。あ~あ、口惜しい。
頭に来た・・・・」
「バブルの全盛の頃は、よく使われた常套手段じゃないか。
君がそこまで、目くじらを立てることはないだろう。
土建屋さんや、設備屋さんの世界ではいまだに使われているそうだ。
女を抱かせる手法は、けっこう効果的な懐柔策になっているんだぜ。
業界では」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第16話~20話 作家名:落合順平