硝子文字
失恋
いつの事だったのだろうか
たぶん初夏かもしれない
真っ青な空に
小さな雲が浮かんでいた
小さな雲と繋がって
ワイングラスを持つ
君の手のように見えた
やがて
その空は君の零したワインの
色に染まった
いつの事だったのだろうか
たぶん秋だろうと思う
コスモスの花びらから
チョコレートの香りがした
君はワインを飲みながら
チョコレートを食べるのだから
君の香りを思い出してしまった
いつの事だったのだろうか
たぶん冬の事だと思う
君は真っ白なドレスを着ていた
いつの事だったのだろうか
たぶんその季節は春に違いない
サクラの季節に君に逢った
人妻となった君に
君の頬が桜色になったような気がした
いつもいつも
空を見ているぼくは
君を見ているのかもしれないと
お・も・う