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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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硝子文字

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失恋



いつの事だったのだろうか

たぶん初夏かもしれない

真っ青な空に

小さな雲が浮かんでいた

小さな雲と繋がって

ワイングラスを持つ

君の手のように見えた

やがて

その空は君の零したワインの

色に染まった


いつの事だったのだろうか

たぶん秋だろうと思う

コスモスの花びらから

チョコレートの香りがした

君はワインを飲みながら

チョコレートを食べるのだから

君の香りを思い出してしまった


いつの事だったのだろうか

たぶん冬の事だと思う

君は真っ白なドレスを着ていた


いつの事だったのだろうか

たぶんその季節は春に違いない

サクラの季節に君に逢った

人妻となった君に

君の頬が桜色になったような気がした


いつもいつも

空を見ているぼくは

君を見ているのかもしれないと

お・も・う
作品名:硝子文字 作家名:吉葉ひろし