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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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硝子文字

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あなたへ



目を閉じていれば
あなたの姿を見ることはできないけれど
閉じた目のなかにあなたの姿が見えてしまう
塞いだ耳なら何も聞こえないけれども
耳鳴りの様にあなたの声は聞こえてしまう
あなたの姿も声も私の体に
入りこんでしまっているから

軽く噛んだ耳たぶから
荒い呼吸の言葉から
激しく波打つ筋肉から
あなたは私の体に入り込んで来た

8月の空が見たくて
窓を開ければ
あなたは小鳥の様にその窓から
真夏の空に飛んで行った
サッシの窓枠が額縁の様に
青い空だけを描いている

その空はあの青い海の様に感じる
そこに浮かぶ白い雲はあの
白い波なのかも知れないと思いだす
夕立の後の虹も綺麗だった
それ以上にあなたの
水着姿を忘れられない
作品名:硝子文字 作家名:吉葉ひろし