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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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秋の月

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隣の部屋に2組の布団が用意されたが、布団は重なるほどにくっ付いていた。私はケイに言葉をかけた。
「横に成れば楽になる」
ケイは頷いたがお膳にもたれ顔を上げない。私はケイの脇の下に手を入れ、立ち上がらせようとしたが、ケイの腰は足を支えられなかった。私は片方の手を腰の下に当て、ケイの体を抱きかかえた。そのまま布団に寝かせて、ケイから体を離そうとした時、ケイの両手が私の首を掴むと、ケイの腕は懸垂するように私に顔を近ずけた。そのままケイの唇が私の唇に触れ、舌が差し込まれた。私はその舌に私の舌を絡ませた。まだ嘔吐した臭いが残っていたが、気にはならなかった。私はケイの胸に手を当てながら、ケイの処女の言葉が頭に湧いた。ケイの言葉は何が本当で何が嘘なのかと疑問を感じると、私の胸に当てた手は力が抜けた。ケイの体に挿入すれば分かる事ではあるが、私は躊躇った。
「おじさま処女なんて嘘」
 ケイは私のペニスを手で掴んだ。勃起しながら私は思考力を失っていった。ケイの性器は濡れていた。私はケイの首筋から胸へと愛撫した。ケイは体をこじらせ悦ぶよりも、くすぐったい様であった。私は慣れていないと感じた。
「入れて」
ケイは催促した。私はケイの体にわずか挿入した時、ケイの顔が歪んだのだ。
私は自分でも分からなかった。ケイから体を離した。
 風呂場のドアを開け、湯船に湯を入れた。
「風呂に入った方がいい」
 ケイは恥ずかしそうに身体を浴衣で隠し、風呂場に入った。
 私は禁煙して3年経っていたが、自動販売機でたばこを買った。部屋に戻るとケイは今朝逢った時の様な顔を見せた。
「部屋にいないから探した」
「たばこを吸いたくなって」
「そう、気にしないから、いいわ」
 私は窓際のテーブルに腰かけた。タバコに火をマッチで点けた。口に含みそっと煙を吐いた。仕事の後の一服。食事の後の一服を思い出した。
「おじさま処女膜破ってくれてありがとう」
「あれはペッテイングだから君の処女膜は健在だよ」
「嘘」
ケイは私の体を両手で叩き始めた。
「君を疑って済まなかった。でもこれからはどんなことがあっても、死ぬことは考えない方がいい。おじさんが出来ることは何でもするよ」
「恋人になってくれる」
「妻がいるんだ」
「不倫でいい」
「君なら若い青年が似合う」
「おじさま、優しいから。優しいんだもの」
「プラトニックでいいかな」
「いいわ。誘惑が楽しみだから」
 下弦の月が弱い光で浮いていた。私はケイが満月の日を迎えるまで支えて行こうと思った。
口から吐き出した煙が円を描きながら消えて行った。
作品名:秋の月 作家名:吉葉ひろし