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WonderLand(下)

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「あの子は、久しぶりに会ったアタシに、切ったチンポを投げて寄越した。アタシのチンポだって、そう云って笑ってた。怖かったよ、何を考えているのか、まったくわからなかった。
 もともとタケルは、普通の男の子に比べると背も小さくて華奢な子だったから、元から女だったと云われても、誰も疑いはしなかっただろうね」
 性転換手術、それはあたしには馴染みのない言葉だった。
 性転換手術を受けて女になった人が一体どういうものなのか、そのときのあたしにはわからなかった。
 父は、モモコが男であったことを知っていたのだろうか。
「全部あたしが悪かったんだ。あの子をこんな風にしてしまったのは、アタシだ。本当に気の毒なことをしてしまった。この手で葬って、良かったんだ。これで、良かったんだ」
 これで良かったんだ、ぽつりと何度もそう呟いた。


「アンタにこれ以上迷惑は掛けはしない。ここを出て行くんだ。奥にウサギの服がある、それに着替えて、早く、人になるべく見られないように帰るんだ。アンタは何にも関わっちゃいない、アンタは何も見ちゃいない」
 着て帰った服は、どこかに捨てるんだよ、見つからないように…リリーさんはそう云って、モモコの亡骸をやさしく撫でた。穏やかな顔。真っ赤に染まったその腹部には、あのカッターナイフが突き刺さっていた。




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 あたしが、リリーさんがあの後警察に自主したことを知ったのは、二日後だった。
 父の遺体は、あの翌日チェックアウトの時間になっても出てこないことを不審に思ったホテルマンによって発見された。性器だけを切り取られた父の遺体から、女性関係のもつれによる怨恨だろうという判断がなされ、捜査本部が設置された。ホテルの監視カメラやフロントでウサギやあたしの姿が目撃されていたことから、あたしはすぐに事情聴取を受けることになった。でもあたしは、一言も口を開かなかった。
 リリーさんの自首は、その事情聴取の場で聞かされた。リリーさんは、モモコが父を殺害したこと、それを知って責任を取るためにモモコを殺したのだと云ったのだそうだ。
「坂出浩輔は、息子のたけるさんが君を脅していたと云っていたが、間違いはないか?」
作品名:WonderLand(下) 作家名:紅月一花