からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話
からっ風と、繭の郷の子守唄(12)
「トナカイカーブと、ツーリングにおけるランデブー」
「おっ。やっぱり理解も早いし、きわめて感度が良いねぇお姉ちゃんは。
そういうことだ。
30歳になったばかりだというのに、何が楽しいのかあの野郎、
年配の客しかやって来ない路地裏で、古ぼけた居酒屋を営業していやがる。
じじぃやババァの相手をする前に、もう少し青春を謳歌しろってんだ。
若いうちは、刺激のある生活ってやつを楽しまなきゃ嘘だろう。
お前さんは、実にナイスボディで、ピチピチだ。
誰が見たって、女の魅力が満載だ。
あんたのその魅力で、他の女に興味をしめさない頑固者の康平の目を
覚ましてやってくれ」
「ふぅ~ん・・・・。他の女に興味をしめさないのか、康平は」
「おう。あいつはいまだに、昔の女に片思い中だ。
もうひとつ、お前さんへアドバイスがある。
バイクっていうやつは、ハンドルでカーブを曲がる訳じゃねぇ。
体の傾きで曲がるものだ。
カーブにさしかかると、遠心力が働らく。
ライダーを外側へ放り出そうという重力のことだ。
重力に逆らってカーブを旋回していくためには、内側に向かって身体を倒す。
躊躇しちゃいけねぇ。
思い切り内側へ身体を倒す必要がある。
バイクというやつは、身体を倒して重心を変えるだけで曲がることが出来る。
2輪というのは、そういう乗り物だ。
嘘じゃねぇ。
この先のカーブで、そいつを実行してみな。
右のカーブで康平が右へ体を倒したら、お前さんも同じように右へ
身体を傾ける。
バイクの傾きと2人の重心が一致すれば、よりスムーズに
カーブを抜けることができる。
より快適なツーリングを、二人で楽しめることになる」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話 作家名:落合順平