小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話

INDEX|2ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「どうだ。簡単だろう、お姉ちゃん。
 プロはこうやって仕事をする。
 露天商の見習いの頃、先輩達から教わったむき方だ。
 鮮度のいいトウモロコシを、速攻でむいたら、すぐに焼き始める。
 遠火の強火ってやつが一番いい。
 まず最大火力で、2~3分くらい焼く。
 焼きムラがないように、少しづつ回転させながら焼きあげる。
 あとは火力を弱くする。それが無理なら、火からトウモロコシを遠ざける。
 大きさにもよるが、12分から15分ぐらいで焼き上がる。
 仕上げに、刷毛で、しょう油をたっぷりと塗る。
 ここが、この仕事の一番の肝心な部分だ。
 醤油はケチらずに、つけすぎるくらい、たっぷりと刷毛で漬ける」


 「あら。そうすると大量に醤油を消費することになりますねぇ・・・・
 赤字になりませんか、たっぷり醤油を使ったら。
 儲からないと困るんでしょ、テキ屋さんのお仕事は?」

 
 「おっ、お姉ちゃん、良い質問だ。
 焼きトウモロコシは、実は、焦げた醤油の香りを嗅がせて商売するんだ。
 客を屋台に引き付けて、なんぼの世界だ。
 トウモロコシというやつは、いくら焼いても大した代物じゃねぇ。
 甘いわけでもないし、インパクトも無い。
 テキ屋が露店で売るには、不向きな商品なんだ。
 そこで考え出されたのが、醤油を焦がして、香ばしくするという方法だ。
 焼いているうなぎの香りを、店先に流しているウナギ屋と、
 まったく同じ発想だ。
 醤油をつけずに、焼き上がったトウモロコシがここにある。
 食ってみな。採りたてのトウモロコシは、醤油なんてものは必要ないのさ。
 醤油はあくまでも、お客を集めるための演出だ。
 商売の裏側なんて、そんなもんだ。
 どうだ。炭火で焼いただけでも、俺のつくったトウモロコシは旨いだろう」



 「ほんと。目からウロコです!
 甘いし、柔らかい。みずみずしい上に、食べごたえがあって美味しいわ」



 「当たり前だ。ものも違うんだ、お姉ちゃん。
 このあたりで栽培しているトウモロコシは、生でも食える品種ばっかりだ。
 あ、おっといけねえゃ・・・・
 初めて会ったばかりのお姉ちゃんに、商売の裏側をばらしちまったぜ!」