からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話
「見てわかるように、湖畔に生えているのは落葉樹ばかりだ。
そのせいで、本来は見つけにくいヤドリギが、真冬に
なると見つけやすくなる。
ミズナラなどに寄生する、ビャクダン科の常緑樹のことをヤドリギと呼ぶ。
ミズナラの枝から水分やミネラルを吸収して、長い時間をかけて育つんだ。
ミズナラが、青々と茂っている春から夏に見つけることは困難だが
冬になるととつぜん目立つようになる。
冬でもヤドリギは、紅葉や落葉をしないため、青い姿のままで生き残る。
すぐに簡単に見つけ出すことができる。
ヤドリギの成長は非常に遅い。
赤城山では樹齢の長いミズナラの大木に、好んで寄生して育つんだ」
「なるほど。ということは、ミズナラの大木を探していけば、今の時期でも、
そのヤドリギを発見することが出来るわけなのね!」
「見つけられない事は無いが、地元の知識がないとまず無理だな。
見ての通り、俺たちの周囲は緑の木々ばかりだ。
最初のチャンスが、同級生の五六が居た標高1000mの駐車場にあった。
「姫百合駐車場」から少し歩いたところに、ミズナラの林がある
そのなかに一本だけ、際立った老木がある。
老木の枝の中に、緑色が特に濃いかたまりが見える。
それがヤドリギだ。
急がしいカップルは、ここで大急ぎでキスを済ませていくそうだ
ただし、駐車場が近過ぎるため、ギャラリーたちもすこぶる多い。
老木の下でキスするのは、かなりの勇気と根性を必要とする」
「集団監視のなかで、誓いのキスか。
う~ん。私でもそれには、少しばかり抵抗がありますねぇ・・・・
他にはないの?。もっとプライバシーを守ってくれそうな、ヤドリギが」
「格好のポイントが、これから行く覚満淵にある。
誰にも内緒だぜ。つい最近、俺が発見したばかりのホットポイントだ」
「早くそれを言ってちょうだい、康平。
大沼の観光も神隠しの話も、すっかり飽きたから、すぐそこへ行きましょう。
恋人たちに幸運をもたらしてくれるという、そのホットなポイントへ。
善は急げだ!。レッツゴー!!」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 11話~15話 作家名:落合順平