深淵の流れ
満月。(11月のお題「月」に寄せて)
あいつと一緒に歩いた
あれは夏のはじめの満月
人でつまった店を出て
笑顔と 月明り 眩しかった
戻ろうか その一言が
なかなか 言えなかった
今夜は満月 吹き抜ける風
雲にかくれた 僕らの明日
もうあの頃には 戻れないけど
二人で見たかった 秋の満月
君と一緒に走った
あれは春のはじめの満月
熱くほてった体に
風と 君の声 心地よかった
家に向かう 坂道下る
遠回りしたいくらいだった
今夜は満月 西の空に花火
季節はずれな音に立ち止まる
自転車で30分の距離が
はてなく思えた 秋の満月
あの人を思った 冬の満月は
ただ苦しくて 悲しくて 切なくて
今夜は満月 独り走る道
あの日の笑顔が 思い浮かぶ
鈴虫の音 稲穂を抜ける風
心満たされる 秋の満月