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嘘と演技

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「よし髪はほぼ同じだ。時間はまだある」
「じゃあ服を着替えるわね。洋平はそっち向いて目を瞑って」
 由美が言うと、「分かった」と言って目を瞑った。
「準備は整ったわ」
「15分経ちました」
 守衛の声だった。
「よし行こう。怪しまれずに」
 さくらさんは言った。
「あやめありがとう。無茶しないでね」
「うん」
「よし」
 ドアに手をかけた時あやめさんが言った。
「さくらさん」
 さくらさんは振り向いてあやめさんの方を見た。
「生きて」
 あやめさんはそう言った。さくらさんは無言で頷いた。

 私と由美とあやめさんを装ったさくらさん三人は外を出た。中にとどまっているあやめさんはうつむいたままの姿勢でケーキを食べる手筈になっている。
 守衛は特に何も気づいていない。受付の人も気づいていない。

「ひとまずどこか。そうだ俺の家に行こう」
ホテルも安全だが松井も呼ぼうと思うので、急に人数が増えると面倒だ。タクシーを止め、
「すいません。横浜の日吉の方に向かってもらえますか?」
 タクシーの運転手にそう声をかけた。
「はい」
 私はまた「右へ」「右へ」「また右へ」と尾行がないかを確認し私の自宅に向かった。自宅に着き三人で中に入った。
「よし。カーテンを閉めよう」
「さくらさん。上手くいったよ。どうやったら社長室に入れる?」
「社長室は暗証番号と指紋だけでは入れません。父が不在の時はその他の鍵が必要です」
「その鍵は?」
「私の自宅に合鍵があります」
「自宅の鍵は?」
「持ってません」
「どこかから侵入できないの?」
 由美が言った。
「侵入しなくても自宅の鍵は玄関の裏に隠してあるから自宅に入るのは簡単です。会社も合鍵で裏からこっそり気づかれないように入れます。指紋認証も私はできるし暗証番号もわかります。夜になれば侵入できるでしょう」
「良かった。じゃあ今夜決行だ」
「でも私にはできません」
 私と由美は耳を疑った。
「出来ない?ちょっと待ってさくらさん。何を言っているんだ?」
「やはり父に逆らう事はできません」
「ちょっとそんな」
 由美も言った。由美は続けた。
「あなたは女の子なのよ。自分の身体を大事にしなければいけないのよ。お父さんの言いなりになってたら、またこのまま身体を売り続ける羽目に…」
「分かってます。そんな事」
 さくらさんは半ばヒステリックに叫んだ。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一