嘘と演技
そんな事を考えながらシャワーを終え、浴室から出た。ちょうどパンツを履いたとき、鍵の開く音がした。由美だろう。
「由美待ってた。今風呂から上がる」
由美は玄関で大きな声で、
「これ指輪返す」
そうドンと音を立て下駄箱の上に指輪と手を叩きつけた。
“由美が怒っている。ホテルから出たのを浮気だと思われているのか”
私は彼女の後を片方裸足で必死に追いかける。
「待て由美違うんだ」
短パンは履いているものの上半身裸で外に出る訳にいかないから、急いで裸にスーツのジャケットを羽織った。そのジャケットには弁護士バッヂがついている。片方だけ黒い靴下、トランクスと区別のつかない短パン、裸からチラチラ見えながら弁護士バッヂを着けたジャケットがゆらゆら揺れる。
それだけ必死だった。
「誤解だ。あの少女とホテルに行ったのは仕事の関係だ。待ってくれ違うんだ」
「ホテルに行って避妊について訊いてくるなんて信じられない。誰があなたの言う事を信じるのよ」
「待て由美はなっから違うんだ」
「ちょっと本当待ってくれ」
由美は無言でスタスタ歩く。
「ます避妊についてだ。これはまだ何かが行われているのではなく、あやめさんと言う先程の女性がロシアに行って起こる危険性で由美に訊いたんだ」
「ロシア?」
由美が振り向いてくれた。