嘘と演技
「へっ?」
思わす聞き返してしまった。あやめさんは一呼吸おいて話し始めた。
「次に結城さんにまだ話してなかったことを話します。さくらさんの自宅で行われた映像音声のデータを手に入れる方法が一つだけあります。確かな情報でないのですが、以前さくらさんが言っていました。私の家のカメラは父の会社にもつながっていて、データとして残る。だからあやめも映っていてデータになっているんだよと」
「本条の会社にか?」
「でもそこは出入りが自由でないのです。運よく中に入ったとしても社長室に入るには暗証番号が必要なんです。それだけじゃなく…」
「それだけじゃなく…」
「指紋で認証するのです。だから私達がどうあがいてもさくらさんの父の社長室に入れないのです」
「そうか指紋で認証か…」
「でもあるんです。方法が…それはさくらさんの指紋。さくらさんの指紋ならデータにインプットされていて中にはいる事が可能なのです」
「でもさくらさんは留置所だし…」
「これから私の話す事を最後まで聴いて下さい」
「まず私達はある準備をしてさくらさんの面会に行きます。そしてわたしとさくらさんが入れ替わります。私が留置所に残り、さくらさんが外に出ます」
「いくらなんでもそれはばれるだろう。そもそも服を着替えたとしても髪型が…」
「私はそのある準備としてかつらを持っていきます。そしてさくらさんの服を着てかつらを被って残ります」
「でもさくらさんは長髪、君はショートカット」
「さくらさんの髪を切るんですハサミを隠し持って」
「君は留置所に残るのか?」
「いえ、しばらくしてさくらさんが離れただろう時間を見計らって出ていこうと思います。ショートカットで素顔を見せて」
「そのあとは?」
「わたしはまたかつらを被ってロシアに旅立ちます。そして裏のやり取りの証拠をつかんでいきます」
「上手く行くかなあ。リスクだらけだ」
「賭けましょう。今日にでも面会に行って」
「でも君がロシアに行ってしまえばばれようがばれまいが君は危険な目にあうぞ」
「分かってます。何とか切り抜けます」
「何とかか…」
しばらく二人は黙って、あやめさんが、
「もし私がロシアで強姦される様な事があったら…それが不安です。最悪避妊とかできるのか。そういう事も私よく分かりません」
「避妊?すまん俺もその所疎くて。彼女に聞いておく」
「ではこの作戦で…」
「さくらさんが留置所から出て、社長室のデータを持って来ればすべて上手く行く。失敗すれば俺達の立場も危うい。裁判も不利になる」
「とにかく私は家に帰ってセーラー服を着てきます。私服同士より上手くごまかせるから」
「俺は彼女の由美に髪を切る役を頼んでみる」
「では一旦別れて留置場の近くのドトールで落ち合おう」
「はい。分かりました。時間は…」
私達は二人で話しながら、ホテルから出た。その時女性と目があった。由美だった。