嘘と演技
―――12月22日第一回目の裁判当日―――
「ご起立ください。それでは開廷します」
裁判官が言う。
私は絶対勝訴できる確かな証拠をスクリーンで映されるDVDプレイヤーに前もってセットする様頼んでおいた。話の段取りやら駆け引きなんていらない。あのCD―ROMが流されればこっちの勝ちだ。雑音こそあるものの話の内容は十分に理解できる。裁判員制度もあり、一般人の判断もあるので国家の理不尽な判決もあり得ない筈だ。
「検察官が読み上げますので聴いていてください。黙秘権がある事を前提にのちに質問等を行います」
検察官は、
「本件の殺人容疑または一部出頭とも思われる本条さくら年齢二十歳高校生は、容疑者の母、本条真由美さんを自宅の一室にて固い置時計で頭部を強打させ、死に至らしめたいう事で、刑法38条1項傷害致死罪に適応し、殺人罪の刑を処するものとします」
裁判官が、
「弁護人は今読み上げた事項について間違いなどはありますか?」
「はい。意義があります」
「ではお願いします」
私は続けた。
「本条さくらさんはある事情があって自ら出頭の様なものをしていますが、正式な出頭ではありません。後程それを立証いたします。それと真由美さんを殺した者が本条さくらさんという推測には目撃者がおらず、幸い、本条家にはセキュリティーが整備され、当時の本条家の様子がデータとして残っています。今再生します」
私は係りの者に指示を出した。
DVDが再生されスクリーンが映し出された。私は、
「このように何故か映像だけが映っていませんが、これらも何らかの工作があったと思われます」スクリーンを見ると、
「映ってますが…」
「あれ、映像がある」
私は驚いてしまった。しばらくその映像を流し続けた。
真由美さんが部屋に入ると、さくらさんが部屋に入り、15分ほどでさくらさんが出てきた。
“おかしい。これじゃない”
検察官が、
「裁判長。ここには本条さくらさんと本条真由美さん以外この家にいない事を表しています。よって何の証拠にもならないどころか、いっそう本条さくら容疑者の犯行を裏付けるものとなります」
私は、
「汚いぞ。すり替えたな!」
そう思わず言ってしまった。
「証拠物件に誤りがあるのですか?」
裁判長がそう言った。
「これではないのです。これでは」
「証拠物件は弁護人あなたの管理のもとで行われているものですよ」
「異議あり。こんなことあり得るか」
「異議を却下します。それと被告人本条さくらさんあなたはあなたの母親である本条真由美さんを殺害したという検察官の言葉に間違いはありませんか?」
さくらさんは
「はい。まち…」
「まて。こんなのなしだ…」
私は大声で叫んだ。
「汚いのはどっちだ。随分乱暴なやり方じゃないか」
検察官が言った。
「裁判長。休廷をお願いします。証拠物件の不備により立証ができません」
「そうですか…」
裁判長はしばらく黙った。
「分かりました。では休廷致します。次の裁判は…検察官の空いている時は…」
裁判は12月27日に持ち越された。
裁判所を出て私とあやめさんは会って話をした。
「CD―ROMがすり替えられるとは…」
あやめさんがまず言った。
「CD―ROMにマジックでも何か書いておけば…真っ白なCD―ROMじゃすり替えられた事も誰も分からない」
松井が現れ言った。
「今CD―ROMをすり替えたと思われる男のバイクが走り去ったのを見た。ナンバーは控えた。これから探してくる」
「おう。松井ありがとう」