嘘と演技
布巾で拭きながら、
「G―girl何で君が?君ひょっとしてさくらさんからいろいろ聞いているの?そういう事か?」
「はい。今まで内緒にしていたので。すいません。さくらさんと二人で絶対に内緒にするって約束だったから。さくらさん、もし私が彼女の秘密を話したらビルから飛び降りて死ぬって…でももし私が誰かに、弁護士やら警察に話さないとさくらさんが犯人になっちゃう。私それだけは耐えられなくて。極刑になったら死ぬんだし。死ぬ位なら真実を明かした方が…」
「その通りだ。真実でなければ意味がない。俺は出世できない弁護士だが、真実を捻じ曲げる様な事だけはしていなかったつもりだ。それが俺の誇りでもある。君は真実を知っている。話してくれないか?君はさくらさんの事を知り、またさくらさんの父である本条則明の事を知った。そのうち君は彼の仕事から最後にG―grilの事まで知ってしまった。そういう事か?」
「いえ。知ったことは確かなんですが。知る順序が違います。わたしはまずさくらさんと出会い親密になり、まずG―girlの秘密を知った。その後さくらさんの父の事を知った」
「きみはまず黒幕の事から知った。その後本条則明を知った?どういう事だ?」
「G―girlとは世界のいろいろな契約に関与していた。陰で動いていた。
G―girlというやり方は弱みを握る事。相手国の権力を持っている人がG―girlと寝て、つまり肉体的な関係を持ち、その弱みで本条則明は相手国との契約やら条約を自分の有利な方に持っていく。G―girlとは売春婦なの」
「つまり世界の契約に関与している売春婦って事か?」
「そう。ヘルシンキ関税撤廃条約、オスロ―和平条約、新モントール和平条約、ニュルンベルク和平条約、トロント和平条約。様々な条約がG―girlの力で本条則明の功績として成立したわ―――これからは絶対さくらさんから内緒にするという約束になっている事だけど私言うわ」
あやめさんはしばらくうつむいて歯を食いしばり、静かに息を吸って言った。
「G―girlの正体は…」
彼女は地下の炭鉱から探り出す様な低い声で、G―girlは…そう言った。心の中で葛藤を堪えられないようにためらっていた。