嘘と演技
冬というものは木枯らしが吹くスピードより、はやくやってくる。
12月21日になった。さくらさんの裁判は明日に控えているがそれはもちろん建前としての裁判だ。本条則明の言った通り、精神疾患を患っている事で少しでも刑を軽くしてもらい更生できる状態、極刑でない状態に持ち込むのが目的だ。
その晩私が夕食を終え缶ビールを開けようとすると、
“ピンポーン”
とインターホンが鳴った。
“誰だろう”
私は玄関に向かい来客者を確認した。セーラー服を着た女の子が立っている。あやめさんだ。
「おう、どうした?あやめさん。また君はいつも汗をかいてるね」
「こんばんは。話があるんです。上がっていいですか?」
「話ならいいが外でしないか?近くのスタバでも行こう」
「いえ。結城さんの家でどうしても話したいんです」
「誰かに聴かれちゃまずい話?」
「ええ」
「分かった。じゃあ上がってくれ」
「はい。お邪魔します」
「お茶だすよ。そこの座布団使ってよ」
「いえ。お構いなく」
「そう。じゃあ俺はビールを飲んでいいか?」
「ビールは控えて下さい」
「えっ?飲んじゃいけないの?」
「大事な話があるんです」
「そう?大事な話?まあお茶だけは出すよ。それで話って」
「ええ。さくらさんの事」
「ああ。それはもう終わったよ。君も辛いだろうけど」
「いえ。さくらさんは犯人ではありません」
「えっ?犯人じゃない?君、あやめさんは彼女が解離性同一障がいの事を知っているの?つまりその上でさくらさんが犯人ではないと?」
「ええ。知っています。さくらさんの障がいも。本条則明もG―girlの正体も」
私は思わず注いでいたお茶をこぼした。