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嘘と演技

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「うん。考えがたいけど、そう考えないと辻褄が合わないんだ」
「国がらみでかくまるって…そうまあとにかく本条則明の情報を少しでも集めたくて。子供がカウンセリングを受けているからそのカウンセラーの野副結季花さんから情報を得ようと、上から野副結季花さんに会って話を聞き出せって…でもやっぱりおかしいわね。本条の娘の経由でのカウンセラーの事を聞いているのであれば、うちの上司も嫌でも殺人事件を知らざるを得ないわね。ひょっとしてうちの直属の上司もその事を知っている?」
「さあ、俺も思うんだが普通親子の殺人事件などがあると、いやでもワイドショーの番組などで連日放送したりするもんだが、それがないんだ。俺も一回NHKのニュースで見ただけでその後放送されていないようだ。
 由美はしばらく考えた様で、
「私分かるわ。何故国がらみで本条則明をかくまるかを」
「どういう事だ?」
「本条はかなりのやり手なの。外交問題で日本にとって都合のいい合意を勝ち取るの。必ず」
「必ず?」
「うん。ただそれにはある秘書が関わっているの。関わっているどころか、本条の秘書は陰で本条の事業やら外交を動かしていて本条を陰で操っている」
「それはどういう奴なんだ?」
「分からないの。全く。IT企業のやり手ではないかとか、ベテランの引退した元外交官か、今現在も活躍している政治家だとかいろいろな説があるけど、誰もその真実を突き止めた人はいないわ」
「ただわかっている事はその秘書は女だって事らしいの」
「女?」
「そう。裏で本条を操っている女。確実に交渉を勝ち取る女。私達の業界の中でその女をこう呼んでるの―――G―girl…」
「G―girl…そいつが黒幕っていう訳だ」
「そういう事ね。私達も知り得なかったけどひょっとしてその本条の娘さん、父親の仕事について、知っていてその話をカウンセラーしているんではないかと思って。何か聞いていないの?」
「申し訳ないが野副さんから本条則明の業務の事までは聞いていなかった。野副さんとは一緒にいられて長い付き合いになると思って。聞き出していなかった。そして空港で由美から電話があった時、急に消えた」
「そう。何も分からないのね」
 由美は乏しい収穫に落胆するようにため息の様な言葉を吐いた。
「でも」
 私は言った。
作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一