嘘と演技
「多くの人間がカンボジアに寄付という形で学校を設立しているわ。例えば政治家とかね。著名人、なかには芸能人もいるけど。学校を設立した事は当然プロフィールに書くことができる。だから政治家などはイメージアップの為、寄付をしている人もいる。私はそのプロフィールの学校設立という事実が本当かどうかを厳重にチェックする係。金銭の出所、国連でもいろいろ調べられるけど、まあ、二重チェックね」
由美は話を続けた。
「なかには投資家と名乗ってひどい人もいるの。投資をしていないどころか、NPOの認定を受けて、逆にお金をもらおうとしている人とか。最低ね。ありえないわ」
「それで私はカンボジアでNPO認定の申請をしている人達の出納帳などを片っ端から調べたわ。その中で申請をしており、上司からこの申請者TEP(イースト戦略的経済連携協定)に関わる重要人物だからくれぐれも念入りに調べてほしいと頼まれたの」
由美は一息おいてコーヒーを口にし、こう言った。
「これから先は外交の中でも絶対秘密事項だから、絶対他には漏らさないで」
「うん。分かった」
「分かりました」霧島もそう言った。
「そのカンボジアでNPOの申請している政治家は結構やり手でいろいろなうわさがたっているの。名誉外交官にもなっていろいろな政策を実行し、海外で必ず交渉に勝ち、契約を結んでくる」
「それって…」
私は本条の事が頭によぎって由美にきいた。
「その外交官の名前は?」
「ええと、今調べるわね。いろいろな人の情報が多過ぎて、もう頭がごちゃごちゃだわ。その外交官の娘がカウンセリングを受けていて、そのカウンセラーから何か情報が得られるのでは。精神疾患を患っている子供だから。余計怪しい。父の何かを隠している。その秘密をカウンセラーにこっそり話していないかって。あっ、あった。あった」
「…本条…」
「やっぱり本条則明だ」
私と霧島は口をそろえてそう言った。
「えっ?何で?何で洋平が子の本条則明を知っているの?」
「なんでも何も、俺達が今取り組んでいる殺人事件は本条親子の問題なんだ」
「えっ?どういう事?」
「本条則明の妻本条真由美さんは殺された。私達は本条則明を睨んでいるが、今の所刑事上は娘の本条さくらさんが容疑者になっている。話は面倒になるがさくらさんも容疑を認めている」
「えっ私本条則明の情報は全て上がっていると思ったけど、親子の殺人事件の話もちらっとテレビで見たけど、まさに本条則明の家族の事だってことは全然聞いてなかったわよ」
「そうなんだ。俺達も不自然に思った事は本条則明はある探偵に調べてもらったところ、内閣総理大臣補佐官もしている。名誉外交官でもあり、事業もしている。後で分かったことだがその事業とは無償で行っているカンボジアなどの慈善事業の事らしいが、そんな著名人の家族が殺されているのに、報道では本条則明の名前は一切出なかった」
「国がらみで本条をかくまっているって事?」