嘘と演技
数時間が経ちまず中国に着いた。機内食を食べコーヒーを飲み、私はうとうとした。
どうやら夢を見たようだ。
「弁護人、何を持って被告人本条さくらさんが無実だと主張するのですか?」
「彼女は虐待を受けていると思うんです」
「裁判長弁護人の話はあくまで推測で事実を裏付ける証拠がありません」
「いえ、裁判長事実はこれから出てくる筈です」
「これから出てくる?裁判所で期日に立証していないものは事実ではないんだ。それとも立証できる何かを弁護人あなたは持っているのですか?」
「はい…それは愛です。私はあの日確かに小田急線の中で二人の愛を感じました。確かにこの目で…だから…」
「異議あり。裁判長。弁護人はこの殺人罪という、慎重かつ厳重に対処しなければいけない裁判を愛という言葉で争点を曖昧にぼかし、また裁判員の感情をかって、事実を捻じ曲げようとしています」
「弁護人の主張を却下する」
裁判官は言った。
「それより被告人の本条さくらさん。あなたは本条則明さん、つまりあなたの父から虐待を受けたのですか?これは裁判に大きく影響する事です。答えてもらえますか?」
私は、
「さくらさん。本当の事を言うんだ、さあ」そう働きかけた。
被告人のさくらさんは言った。
「それは…虐待は…受けていません。母を殺したのも私です」
「おいさくらさん。何を言うんだ。それを言ったら負けだぞ。本当の事を言うんだ。本条父から何を脅されている。何が君をそうさせている」
「弁護人見苦しいぞ。以上を持って被告人を有罪とし、極刑を命じる」
「さくらさん…さくらさん…」
その時私は永い眠りから目を覚ました。