嘘と演技
次の日私と野副さんと霧島はさくらさんが通院していた麻布クリニックで待ち合わせをしていた。霧島がまだ来ていないので私と野副さんがクリニックの中で話をしていた。私は、
「やっぱり、守秘義務とか厳しいんでしょう。先生私達に病名を教えてくれますかねえ」
「さあ。守秘義務と言っても必要にせがまれれば、守れない事もあるし、死刑か否かに繋がる情報なら教えてくれると思うんですが…」
「それより遅いな。霧島何やってるんだ」
その時私の携帯が鳴った。
霧島からだった。
「おう、どうした霧島」
「結城さん。本条則明とのアポが取れました。今日であれば必ず本条は会ってくれると。
だから今すぐ向かいましょう」
「でかしたぞ霧島。でもちょっと待て。クリニックで病名の件終わってから、本条則明の所に向かう。それでいいだろう」
「それが駄目なんです。本条は会うと言ってますが、会う場所がカンボジアであればと、言っているのです」
「何を馬鹿な」
「いえ。本条の秘書が航空券も滞在先のホテルも用意してくれるそうです。今日の昼の便で成田から」
「そんな急すぎないか…」
「詳しくは分かりませんが、本条はカンボジアで仕事をしている様です。何かウラが手に入るチャンスかもしれません。行っといて損はないでしょう。クリニックはまた日本に戻ってからいつでも行けます。結城さんと野副さんはそれぞれパスポートをお持ちですか?」
「俺はあるが…野副さんパスポートはおありですか?」
「ええ」
「ではすぐ家からパスポートを持って東京駅の八重州口で落ち合いましょう」