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嘘と演技

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 次の日の朝私が目を覚まし、テレビをつけニュースをみた。それを観た私は驚きのあまり、また事実も受け入れる事さえできない程、動揺と困惑の渦に引き込まれた。

‘今朝2時頃、東京都港区の三田警察署に港区に住む20歳の本条さくらさんから「母親を殺してしまった」と110番通報があり、警察から逃れる事が出来ないので出頭してきた供述しています。警察官が駆けつけ、本条さんの自宅を調べたところ2階の寝室で、この家に住む本条真由美さん46歳が頭部を固い置時計の様なもので強打され倒れており、すでに死んでいるのが発見されました。この家に住む長女さくらさんの話によると、
「母親が理解してくれないので苦しんでいる。邪魔な存在だったと。しかしやってはいけない事をしてしまった」と母親を殺害してしまった事を認めている模様です。また警察の調べによるとこの長女さくらさん20歳は、精神疾患を持っており近く精神鑑定を受け警察は動機などを更に慎重に調べを進めていく方針です。

ニュースを見て愕然とした。あの母と娘が、昨日まさしく小田急線の中で見たあの母を殺した。
 病を患っても前向きに進んでいたんじゃないのか?彼女は母親を信頼してたのではないのか?そう。私はあの時確かにこの親子から愛を感じた。あの二人から愛がなければ生まれてこない空気を確かに感じたんだ。そんな筈はとその得心のいかぬ気持ちが私を占拠した。またそこからどうしても捨てきれない一つの疑惑が当然生まれた。

“本当にあの娘が母を殺したのか?”-

作品名:嘘と演技 作家名:松橋健一